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祭り祭りで見た東北の新しい魅力

祭りの季節がやってきた。東日本大震災から間もなく2年5カ月。東北の被災地では、各県を代表する夏祭りだけでなく、国内外の支援を受け地域に伝わる伝統行事が復活している。日々の暮らしに追われる人々が短い夏を精いっぱい楽しみ、明日を生きる勇気をもらう。
津波で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市では昨年8月、山車をぶつけ合う「気仙町けんか七夕」が2年ぶりに復活した。全国から支援を受け、若手が中心となり運行された山車には「日常が戻りますように」という短冊が飾られていた。
「けんか七夕」は今年も8月7日に行われる。がれきは撤去されたものの、かつてのにぎわいを取り戻せないでいる街。関係者は「ここでやること、そして続けることに意義がある」と古里の復興を信じて、準備を進める。
一昨年の仙台市、昨年の盛岡市に続き、今年6月、福島市で「東北六魂祭」が行われた。東北6県を代表する夏祭りが、東京電力福島第1原発の事故で苦しむ県民らを励ました。
民俗学者の柳田国男は、日本人の伝統的な世界観の一つとして「ハレとケ」を提唱した。ハレ(晴れ)は儀礼や祭り、年中行事などの「非日常」で、ケは普段の生活を表している。
東日本大震災はわれわれの日常の暮らしを奪い取った。復興は進まず、除染作業という目に見えない戦いも続く。そんな「非日常」が「日常」に変わる。東北の祭りは、かつての「ハレとケ」を取り戻すための通過儀礼の一つなのかもしれない。
東北6県の主要7新聞社で構成する東北七新聞社協議会の企画「東北発ニッポン元気アクション」。「東北から日本を元気にする」というテーマで、わが国だけでなく世界を活性化するヒントを家族、食、医療などをキーワードに探していく。

【岩手日報社】