早期診断により心房細動に起因する脳卒中は予防できる

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「早期診断により、心房細動に起因する脳卒中は予防できる」と語る久保田功山形大医学部付属病院長

脳卒中(脳血管疾患)で亡くなる人は全国で12万人に上り、死因別ではがん(悪性新生物)、心臓病に次いで3番目に多い。厚生労働省の人口動態統計(2014年)で人口10万人に対する脳卒中の死亡率を比較すると、東北各県とも全国平均を大きく上回っているのが現状だ。死を免れても介護が必要な状態になる恐れがあり、健康寿命を縮める大きな原因となっている。

脳卒中には血管が詰まる「脳梗塞」、血管が切れる「脳出血」、脳動脈瘤(りゅう)が破裂する「くも膜下出血」の3種類がある。近年は脳梗塞が増加傾向にあり、脳卒中の6割を占める。さらにその3分の1が「心房細動」という不整脈を原因としていることに着目したい。プロ野球巨人元監督の長嶋茂雄氏や元首相の小渕恵三氏、サッカー元日本代表監督のイビチャ・オシム氏は、いずれも心房細動による脳梗塞で倒れた。

心房細動は心臓に入る血液が集まる「心房」がけいれんし、血液を送り出す「心室」が不規則に収縮した病態。心臓内に血の塊ができやすくなり、はがれた血栓が大動脈を流れて脳の血管を詰まらせると脳梗塞になる。特に高齢者は心房細動を発症しやすく、重症に陥るケースが多い。高齢化社会の進行に伴って症例数が増えており、注意が必要だ。

心臓内に血栓が見つかるか、血栓ができやすいと診断された場合、血液を固まりにくくする抗凝固薬で処置する。これまではワルファリンという薬が主流だったが▽服薬量の調節が難しく、効き過ぎると出血の危険性が高い▽ビタミンKを多く含む納豆や緑黄色野菜、山菜を食べると効果が低減する|などのリスクがあった。しかし、ここ数年で食事制限の必要がなく、出血の危険性が低い新薬が数種類販売されており、抗凝固薬が使いやすい状況となっている。

心房細動は食事や運動に気を配って生活していても、突然発症する恐れがある。動悸(どうき)を感じるなど初期症状が出たら、速やかに医師の診断を受けることが重要だ。服薬治療を継続し、適切にリスク管理を行うことで、心房細動に起因する脳梗塞は予防できる。健康寿命を延ばす上で、それが一番確実だと考える。

東北地方は高齢者が多い。だからこそ早期診断で心房細動に対応し、脳卒中のリスクを摘むことは、高齢者が元気に活躍できる社会をつくるために極めて効果的な方策だと言えるだろう。

久保田 功(くぼた・いさお)氏山形大医学部付属病院長(山形市)