とうほく創生Genkiプロジェクト
フォーラム in 盛岡

東北七新聞社協議会主催の「とうほく創生Genkiプロジェクト」のフォーラムは12月1日、盛岡市内のホテルで「かがやく とうほく」をテーマに東北内外から約350人が出席して開かれた。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会アンバサダーの廣瀬俊朗(としあき)さん(38)が「ラグビーと東北〜ラグビーの可能性とは」と題して基調講演。観光、食、人・産業の各分野の専門家3人によるパネル討論も行い、活力ある東北の未来像を考えた。

講演 / ラグビーワールドカップ2019アンバサダー / 廣瀬俊朗さん
ラグビーはどんな人でも活躍できる / 掛け合わせ 東北の魅力発信の足がかりに

廣瀬俊朗さん

廣瀬俊朗さん

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会が終わり、日本代表はベスト8に入り本当に素晴らしかった。一番の要因は皆さんの応援。今回良かったのは、いろいろな選手を覚えてもらったこと。笑わない男とか、海外出身の選手も知ってもらった。東北の選手も活躍している人が多い。耐え忍ぶポジションで体も大きい。東北の人は日本のラグビーを支えている。

ラグビーのいいところは誰しもが活躍できるポジションがあること。自分を変えずに活躍できるポジションがあると自己肯定感が高まる。「ここにいていいんだ」と楽しくなる。他人にも優しくできる。違いも受け入れやすい。社会の仕組みにも近いと思う。

10年前は日本代表のジャージーを着ている人はあまりいなかった。国歌斉唱で君が代を歌う人もあまりいなかった。そんな世界を変えたい、こんな世界をつくりたいというのが僕たちの目的だった。目標と目的で言えば、憧れの存在になることが目的。目標は勝つこと。目的に特化する方が楽しいし、一人一人が意気に感じてやれることがたくさんある。

イノベーションは掛け合わせだと思う。素晴らしいものと何かを掛け合わせる。僕は国歌でおもてなしということを始めた。W杯出場国の国歌を覚えて一緒に歌う。海外の選手は喜んでくれた。日本人が海外を知るきっかけにもなる。釜石市でW杯ウルグアイ-フィジー戦が行われた時、マスコットキッズが国歌を大声で歌った。ウルグアイの主将が「日本の子どもが大きな声で国歌を歌ってくれてホームで戦っている気分だった」と感激した。彼に勇気を与えたのは子どもだった。スポーツと歌という掛け合わせでイノベーションができる。子どもにとっても試合を見ただけではなく歌を歌って、何かを共にできたという経験はすごくいい。ファンとファンをつなぐ取り組みがあるが、ファンと選手がつながるのは大事。何かを与えられるのではなく、こちらから提供する発想、掛け合わせが大切だ。

日本は人口が減っている。世界の人口は増加傾向にある。国内だけではなく、どこを見ていくかということが重要だ。海外の人と関わる仕事をすることが必須になってくる。東北の皆さんは内に秘めている素晴らしいものがある。もう一歩頑張って海外と交流することが大切。将来を見据えこんな地域にしたいとアクションし続けていくことが重要だ。

ラグビー日本代表は憧れの存在になるために勝とうというのがテーマだった。東北の皆さんは何のためにやるのか、誰を幸せにしたいのか、覚悟を決めてどうやって東北のいいところを動かすのか。そして信じてやり抜く。結果が出るかどうかは分からないが、信じてやることが楽しい。それが人生を豊かにする。何かをテーマにして一致団結することは面白い。ラグビーの価値は相手を敬い寄り添うこと。皆さんと共に「かがやく とうほく」をつくりたいと思う。

未来の東北を彩るための 三人の有識者によるパネル討論

パネル討論
  • パネリスト
  • ■ 日本政策金融公庫代表取締役副総裁 伊藤 健二(いとう・けんじ)氏
  • ■ 東北観光推進機構専務理事推進本部長 紺野 純一(こんの・じゅんいち)氏
  • ■ JA全農東北営農資材事業所長 岩田 和彦(いわた・かずひこ)氏
  • コーディネーター
  • ■ 岩手日報社編集局次長兼論説委員 藤原 哲(ふじわら・さとし)氏
  • 司会
  • ■ IBC岩手放送アナウンサー 甲斐谷 望(かいたに・のぞみ)氏

 

紺野純一氏

紺野純一氏

藤原 東北の現状と課題をどう見る。

紺野 インバウンド(訪日外国人客)は東日本大震災後、日本全体では伸びているが、東北は厳しい状況が続いた。一昨年秋ぐらいから東北へ海外からの直行便の新規就航や再就航などもあり、ようやく増えてきた。台湾、タイ、香港が増え、紅葉の秋、桜の4月、雪の2月も最近伸びている。しかし、日本全体の宿泊人数の比率で考えれば1.5%。東北全体の観光素材の魅力を考慮すればインバウンドの数を増やすことが課題。欧米からの富裕層や長期滞在者を拡大することも大切だ。

岩田 全農では東北をキーワードに全農東北プロジェクトを展開している。各県の若手職員が5年前に企画して始まり、各方面と連携し、東北の食のプロモーション、東北の食の商品開発、東北のブランディング、パートナー企業との連携に取り組んでいる。東北和牛というブランドをつくり、香港、台湾、シンガポール、マカオでの海外商標を取得し、現在香港から輸出を始めている。フェイスブックも立ち上げ東北のイベントなども発信している。東北観光推進機構との連携を始め、台湾でのイベントで東北六県絆米をPRした。台湾の人に実際に来てもらい、作っている現場に行ってみたいと思えるようにしたい。

紺野 (東北観光推進機構とJA東北との連携は)大変ありがたい。観光と言えば旅行代理店と交通機関、宿泊施設、観光施設などで成り立つ時代では今はない。最近は食が重要なコンテンツになり、それらを育てるプロセスも観光の魅力の一部になっている。東北には素晴らしい食材や食文化があり、東北の観光コンテンツを連携により創出していきたい。

伊藤健二氏

伊藤健二氏

伊藤 人口減はご承知の通りだが、企業数は15年間で約27%減少している。人口減少よりも速いスピードで企業数が減少している。東北を活性化させるためには、地域を支える企業が大事だ。開業率は平均で全国が5・4%。欧米は10%。日本は低いが、中でも東北は低い。地域の持続可能性、多様性をつくるためには創業支援が重要で、支援の態勢は整っており、それにもっと魂を入れる必要がある。東日本大震災からの復興は、復興庁の分析では生産水準はほぼ震災前に戻っている。問題は販路開拓だ。東北の事業者がもっと外に出ることが重要だ。

日本公庫は創業・新事業、事業再生、事業承継、ソーシャルビジネス、海外展開、農林水産業の新たな展開の六つを成長戦略分野として力を入れているが、大切なのは業種であるとか、組織であるとか、小さくまとまらずに地域丸ごとで連携・支援することだ。

甲斐谷 東北をより輝かせるための提言をいただきたい。

岩田和彦氏

岩田和彦氏

岩田 宮城県山元町に「やまもとファームみらい野」という法人があり、津波被害を受け、すべて更地にして造成された100ヘクタールの農業法人である。ロボットトラクター、ドローン(小型無人機)などのスマート農業を農業法人と一緒に実践している。これをモデルに東北全県の農家の皆さんに情報提供していきたい。農泊についても力を入れ、農業から東北への誘致も考えている。稲刈り後の田んぼに立つ「棒がけ」も農村文化であり、田んぼの規模は東北が本州では圧倒的に大きく、水田の緑の景色も美しい。これをどうやって発信していくか。現在全農で取り組んでいる田んぼの生き物調査も農村の魅力を発信する取り組みにもなる。アジアからの観光客の世代は年々若くなり、彼らの多くが都会に住み、田んぼの経験がない。そんなアジア、中国の観光客に日本の農村を経験してもらう、見てもらう。それをパートナー企業と連携して発信していくことで農家がもっと自信を持って元気になれる。

伊藤 今後10年間で70歳を超える中小企業経営者は約245万人。うち半数は後継者未定といわれている。事業承継は事業所を守るだけではなく、その地域の暮らしや文化を守ることにもつながる。地方に人を呼び込み仕事をつくり出す創業や新規就農を推進することも重要だ。創業には雇用の場の創出、新たな商品・サービスの供給、新陳代謝の促進の三つの機能がある。最終的にはそれらが地域の持続可能性につながる。創業の一つひとつは小さくても、多様性のある企業が集まり、「層」となることで、地域の個性や多様性を形づくり、地域に活力をもたらす。また、東北の基幹産業である農林水産業を産業として進めるためには作るだけでなく、販路開拓が重要で、海外展開など攻めの展開が必要だ。全ての地域活性化の中には必ずキーパーソンが出てくる。そのキーパーソンを地域住民、行政、関係機関が応援することで活性化につながる。地域丸ごとで人材を生み出していくことが重要だ。

紺野 観光も同じく現場で働いている人の役割は重要だ。特に、これからの観光産業を担う若手人材の育成が大切だ。東北観光推進機構では4年前から東北全体を俯瞰し企画や連携できる広い視野を持った人材を育てる「フェニックス塾」を開催し、今年で150人のネットワークが出来る。DMO(観光地域づくり法人)は東北で地域連携DMOが17法人、地域DMOが24法人ある。共通のデータベースを持ちながらネットワーク化し観光素材を磨き上げていくことが大事だ。海外マーケットを意識しながらプロモーション・マーケティングに取り組まなければならない時代。広域連携・異業種との融合、それらを重層的にPRしていくことが、観光分野・産業分野で輝く未来をつくるために重要なキーワードになる。

東北のインバウンドにも追い風が吹いてきた。世界的旅行雑誌「ロンリープラネット」のベストイン トラベル2020で東北が3位に選ばれた。もう一つの世界的旅行雑誌である「ナショナルジオグラフィック」で東北が冒険部門で世界の25ケ所の一つに選ばれた。

東日本大震災から10年が経つ2021年には、4月から9月まで東北6県で東北ディスティネーションキャンペーン(DC)が開催される。DCは東日本大震災からの復興の力にもなってきた。東北全体で東北の良さをPRすることが地域を元気にしていく。

甲斐谷 最後にひと言お願いします。

伊藤 多様性のある地域として活性化を目指してほしい。ふわふわとした支援では物事は進まない。キーパーソンを地域丸ごとで支援して、逆にキーパーソンを生み出す地域の循環をつくってほしい。

紺野 観光は地域づくりが重要で、時代を見据えデジタルデータを活用しながら新しい発想を持って連携し取り組むことが大事になってくる。

岩田 インバウンド、農泊などで農家の新しい仕事が生まれる。農家も意識改革が必要になる。いかにして仕組みをつくるのかが重要だ。

藤原 国内外から東北に観光客を呼ぶことは交流人口を増やし、震災被災地の人々を元気づける。食は地元の食材を発信し、首都圏などで東北産の食材を選んでもらい、食べに来てもらうことで東北の活性化につながる。若い人が少なければ産業は衰退する。事業承継が課題であると同時に、可能性も感じることもできた。東北の魅力が伝われば、移住先の選択肢となり、移住後は地元の良さを発信するという好循環をつくって東北の価値が高まっていく。

東北7新聞社共同宣言

東北7新聞社共同宣言

共同宣言を読み上げる7新聞社社長

東北七新聞社協議会の2019年度代表を務める岩手日報社の東根千万億(あずまね・ちまお)社長、河田喜照(かわた・よしてる)東奥日報社社長、佐川博之(さがわ・ひろゆき)秋田魁新報社社長、寒河江浩二(さがえ・ひろじ)山形新聞社社長、一力雅彦(いちりき・まさひこ)河北新報社社長、高橋雅行(たかはし・まさゆき)福島民報社社長、五阿弥宏安(ごあみ・ひろやす)福島民友新聞社社長が登壇。東根社長が代表して共同宣言を読み上げた。

全文は次の通り。
私たち東北七新聞社協議会は2015年度からとうほく創生Genkiプロジェクトとして地方創生に取り組んでおります。東北地方で顕著にみられる少子高齢化、過疎化の波を乗り切るために観光や産業、食の分野における6県の先駆的事例を新聞を通して地域が共有することで活力を生み出そうと力を結集してまいりました。今年は「かがやく とうほく」をテーマに訪日外国人観光客の集客や地域外への情報発信、そして時代を切り開く企業の取り組みなどを紙面で紹介いたしました。本日のフォーラムを通して地域に活力をもたらすのは東北各地に根を張って生きる人々の力であることを改めて感じております。このプロジェクトは2020年までの6年間で地方創生に関わる課題解決に取り組む計画です。東京オリンピックパラリンピックで日本が世界から注目を集める機会に、東北の魅力を発信するため、私たちは今後より一層、東北の人々に潜在する力を引き出すその一翼を担い続けることをここに宣言します。

パネル展示 / 虎舞

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東北の7新聞社の「とうほく創生Genkiプロジェクト」特集紙面を紹介するパネル展示。東北各地のモデル的な事例が注目を集めた

 
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岩手県釜石市の釜石商工高虎舞委員会の生徒たちがアトラクションとして虎舞を披露し、フォーラムを盛り上げた

東北七新聞社協議会主催の「とうほく創生Genkiプロジェクト」のフォーラムは12月1日、盛岡市内のホテルで「かがやく とうほく」をテーマに東北内外から約350人が出席して開かれた。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会アンバサダーの廣瀬俊朗(としあき)さん(38)が「ラグビーと東北〜ラグビーの可能性とは」と題して基調講演。観光、食、人・産業の各分野の専門家3人によるパネル討論も行い、活力ある東北の未来像を考えた。

講演 / ラグビーワールドカップ2019アンバサダー / 廣瀬俊朗さん
ラグビーはどんな人でも活躍できる / 掛け合わせ 東北の魅力発信の足がかりに

廣瀬俊朗さん

廣瀬俊朗さん

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会が終わり、日本代表はベスト8に入り本当に素晴らしかった。一番の要因は皆さんの応援。今回良かったのは、いろいろな選手を覚えてもらったこと。笑わない男とか、海外出身の選手も知ってもらった。東北の選手も活躍している人が多い。耐え忍ぶポジションで体も大きい。東北の人は日本のラグビーを支えている。

ラグビーのいいところは誰しもが活躍できるポジションがあること。自分を変えずに活躍できるポジションがあると自己肯定感が高まる。「ここにいていいんだ」と楽しくなる。他人にも優しくできる。違いも受け入れやすい。社会の仕組みにも近いと思う。

10年前は日本代表のジャージーを着ている人はあまりいなかった。国歌斉唱で君が代を歌う人もあまりいなかった。そんな世界を変えたい、こんな世界をつくりたいというのが僕たちの目的だった。目標と目的で言えば、憧れの存在になることが目的。目標は勝つこと。目的に特化する方が楽しいし、一人一人が意気に感じてやれることがたくさんある。

イノベーションは掛け合わせだと思う。素晴らしいものと何かを掛け合わせる。僕は国歌でおもてなしということを始めた。W杯出場国の国歌を覚えて一緒に歌う。海外の選手は喜んでくれた。日本人が海外を知るきっかけにもなる。釜石市でW杯ウルグアイ-フィジー戦が行われた時、マスコットキッズが国歌を大声で歌った。ウルグアイの主将が「日本の子どもが大きな声で国歌を歌ってくれてホームで戦っている気分だった」と感激した。彼に勇気を与えたのは子どもだった。スポーツと歌という掛け合わせでイノベーションができる。子どもにとっても試合を見ただけではなく歌を歌って、何かを共にできたという経験はすごくいい。ファンとファンをつなぐ取り組みがあるが、ファンと選手がつながるのは大事。何かを与えられるのではなく、こちらから提供する発想、掛け合わせが大切だ。

日本は人口が減っている。世界の人口は増加傾向にある。国内だけではなく、どこを見ていくかということが重要だ。海外の人と関わる仕事をすることが必須になってくる。東北の皆さんは内に秘めている素晴らしいものがある。もう一歩頑張って海外と交流することが大切。将来を見据えこんな地域にしたいとアクションし続けていくことが重要だ。

ラグビー日本代表は憧れの存在になるために勝とうというのがテーマだった。東北の皆さんは何のためにやるのか、誰を幸せにしたいのか、覚悟を決めてどうやって東北のいいところを動かすのか。そして信じてやり抜く。結果が出るかどうかは分からないが、信じてやることが楽しい。それが人生を豊かにする。何かをテーマにして一致団結することは面白い。ラグビーの価値は相手を敬い寄り添うこと。皆さんと共に「かがやく とうほく」をつくりたいと思う。

未来の東北を彩るための 三人の有識者によるパネル討論

パネル討論
  • パネリスト
  • ■ 日本政策金融公庫代表取締役副総裁 伊藤 健二(いとう・けんじ)氏
  • ■ 東北観光推進機構専務理事推進本部長 紺野 純一(こんの・じゅんいち)氏
  • ■ JA全農東北営農資材事業所長 岩田 和彦(いわた・かずひこ)氏
  • コーディネーター
  • ■ 岩手日報社編集局次長兼論説委員 藤原 哲(ふじわら・さとし)氏
  • 司会
  • ■ IBC岩手放送アナウンサー 甲斐谷 望(かいたに・のぞみ)氏

 

紺野純一氏

紺野純一氏

藤原 東北の現状と課題をどう見る。

紺野 インバウンド(訪日外国人客)は東日本大震災後、日本全体では伸びているが、東北は厳しい状況が続いた。一昨年秋ぐらいから東北へ海外からの直行便の新規就航や再就航などもあり、ようやく増えてきた。台湾、タイ、香港が増え、紅葉の秋、桜の4月、雪の2月も最近伸びている。しかし、日本全体の宿泊人数の比率で考えれば1.5%。東北全体の観光素材の魅力を考慮すればインバウンドの数を増やすことが課題。欧米からの富裕層や長期滞在者を拡大することも大切だ。

岩田 全農では東北をキーワードに全農東北プロジェクトを展開している。各県の若手職員が5年前に企画して始まり、各方面と連携し、東北の食のプロモーション、東北の食の商品開発、東北のブランディング、パートナー企業との連携に取り組んでいる。東北和牛というブランドをつくり、香港、台湾、シンガポール、マカオでの海外商標を取得し、現在香港から輸出を始めている。フェイスブックも立ち上げ東北のイベントなども発信している。東北観光推進機構との連携を始め、台湾でのイベントで東北六県絆米をPRした。台湾の人に実際に来てもらい、作っている現場に行ってみたいと思えるようにしたい。

紺野 (東北観光推進機構とJA東北との連携は)大変ありがたい。観光と言えば旅行代理店と交通機関、宿泊施設、観光施設などで成り立つ時代では今はない。最近は食が重要なコンテンツになり、それらを育てるプロセスも観光の魅力の一部になっている。東北には素晴らしい食材や食文化があり、東北の観光コンテンツを連携により創出していきたい。

伊藤健二氏

伊藤健二氏

伊藤 人口減はご承知の通りだが、企業数は15年間で約27%減少している。人口減少よりも速いスピードで企業数が減少している。東北を活性化させるためには、地域を支える企業が大事だ。開業率は平均で全国が5・4%。欧米は10%。日本は低いが、中でも東北は低い。地域の持続可能性、多様性をつくるためには創業支援が重要で、支援の態勢は整っており、それにもっと魂を入れる必要がある。東日本大震災からの復興は、復興庁の分析では生産水準はほぼ震災前に戻っている。問題は販路開拓だ。東北の事業者がもっと外に出ることが重要だ。

日本公庫は創業・新事業、事業再生、事業承継、ソーシャルビジネス、海外展開、農林水産業の新たな展開の六つを成長戦略分野として力を入れているが、大切なのは業種であるとか、組織であるとか、小さくまとまらずに地域丸ごとで連携・支援することだ。

甲斐谷 東北をより輝かせるための提言をいただきたい。

岩田和彦氏

岩田和彦氏

岩田 宮城県山元町に「やまもとファームみらい野」という法人があり、津波被害を受け、すべて更地にして造成された100ヘクタールの農業法人である。ロボットトラクター、ドローン(小型無人機)などのスマート農業を農業法人と一緒に実践している。これをモデルに東北全県の農家の皆さんに情報提供していきたい。農泊についても力を入れ、農業から東北への誘致も考えている。稲刈り後の田んぼに立つ「棒がけ」も農村文化であり、田んぼの規模は東北が本州では圧倒的に大きく、水田の緑の景色も美しい。これをどうやって発信していくか。現在全農で取り組んでいる田んぼの生き物調査も農村の魅力を発信する取り組みにもなる。アジアからの観光客の世代は年々若くなり、彼らの多くが都会に住み、田んぼの経験がない。そんなアジア、中国の観光客に日本の農村を経験してもらう、見てもらう。それをパートナー企業と連携して発信していくことで農家がもっと自信を持って元気になれる。

伊藤 今後10年間で70歳を超える中小企業経営者は約245万人。うち半数は後継者未定といわれている。事業承継は事業所を守るだけではなく、その地域の暮らしや文化を守ることにもつながる。地方に人を呼び込み仕事をつくり出す創業や新規就農を推進することも重要だ。創業には雇用の場の創出、新たな商品・サービスの供給、新陳代謝の促進の三つの機能がある。最終的にはそれらが地域の持続可能性につながる。創業の一つひとつは小さくても、多様性のある企業が集まり、「層」となることで、地域の個性や多様性を形づくり、地域に活力をもたらす。また、東北の基幹産業である農林水産業を産業として進めるためには作るだけでなく、販路開拓が重要で、海外展開など攻めの展開が必要だ。全ての地域活性化の中には必ずキーパーソンが出てくる。そのキーパーソンを地域住民、行政、関係機関が応援することで活性化につながる。地域丸ごとで人材を生み出していくことが重要だ。

紺野 観光も同じく現場で働いている人の役割は重要だ。特に、これからの観光産業を担う若手人材の育成が大切だ。東北観光推進機構では4年前から東北全体を俯瞰し企画や連携できる広い視野を持った人材を育てる「フェニックス塾」を開催し、今年で150人のネットワークが出来る。DMO(観光地域づくり法人)は東北で地域連携DMOが17法人、地域DMOが24法人ある。共通のデータベースを持ちながらネットワーク化し観光素材を磨き上げていくことが大事だ。海外マーケットを意識しながらプロモーション・マーケティングに取り組まなければならない時代。広域連携・異業種との融合、それらを重層的にPRしていくことが、観光分野・産業分野で輝く未来をつくるために重要なキーワードになる。

東北のインバウンドにも追い風が吹いてきた。世界的旅行雑誌「ロンリープラネット」のベストイン トラベル2020で東北が3位に選ばれた。もう一つの世界的旅行雑誌である「ナショナルジオグラフィック」で東北が冒険部門で世界の25ケ所の一つに選ばれた。

東日本大震災から10年が経つ2021年には、4月から9月まで東北6県で東北ディスティネーションキャンペーン(DC)が開催される。DCは東日本大震災からの復興の力にもなってきた。東北全体で東北の良さをPRすることが地域を元気にしていく。

甲斐谷 最後にひと言お願いします。

伊藤 多様性のある地域として活性化を目指してほしい。ふわふわとした支援では物事は進まない。キーパーソンを地域丸ごとで支援して、逆にキーパーソンを生み出す地域の循環をつくってほしい。

紺野 観光は地域づくりが重要で、時代を見据えデジタルデータを活用しながら新しい発想を持って連携し取り組むことが大事になってくる。

岩田 インバウンド、農泊などで農家の新しい仕事が生まれる。農家も意識改革が必要になる。いかにして仕組みをつくるのかが重要だ。

藤原 国内外から東北に観光客を呼ぶことは交流人口を増やし、震災被災地の人々を元気づける。食は地元の食材を発信し、首都圏などで東北産の食材を選んでもらい、食べに来てもらうことで東北の活性化につながる。若い人が少なければ産業は衰退する。事業継承が問題であると同時に、可能性も感じることもできた。東北の魅力が伝われば、移住先の選択肢となり、移住後は地元の良さを発信するという好循環をつくって東北の価値が高まっていく。

東北7新聞社共同宣言

東北7新聞社共同宣言

共同宣言を読み上げる七新聞社社長

東北七新聞社協議会の2019年度代表を務める岩手日報社の東根千万億(あずまね・ちまお)社長、河田喜照(かわた・よしてる)東奥日報社社長、佐川博之(さがわ・ひろゆき)秋田魁新報社社長、寒河江浩二(さがえ・ひろじ)山形新聞社社長、一力雅彦(いちりき・まさひこ)河北新報社社長、高橋雅行(たかはし・まさゆき)福島民報社社長、五阿弥宏安(ごあみ・ひろやす)福島民友新聞社社長が登壇。東根社長が代表して共同宣言を読み上げた。

全文は次の通り。
私たち東北七新聞社協議会は2015年度からとうほく創生Genkiプロジェクトとして地方創生に取り組んでおります。東北地方で顕著にみられる少子高齢化、過疎化の波を乗り切るために観光や産業、食の分野における6県の先駆的事例を新聞を通して地域が共有することで活力を生み出そうと力を結集してまいりました。今年は「かがやく とうほく」をテーマに訪日外国人観光客の集客や地域外への情報発信、そして時代を切り開く企業の取り組みなどを紙面で紹介いたしました。本日のフォーラムを通して地域に活力をもたらすのは東北各地に根を張って生きる人々の力であることを改めて感じております。このプロジェクトは2020年までの6年間で地方創生に関わる課題解決に取り組む計画です。東京オリンピックパラリンピックで日本が世界から注目を集める機会に、東北の魅力を発信するため、私たちは今後より一層、東北の人々に潜在する力を引き出すその一翼を担い続けることをここに宣言します。

パネル展示 / 虎舞

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東北の7新聞社の「とうほく創生Genkiプロジェクト」特集紙面を紹介するパネル展示。東北各地のモデル的な事例が注目を集めた

 
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岩手県釜石市の釜石商工高虎舞委員会の生徒たちがアトラクションとして虎舞を披露し、フォーラムを盛り上げた