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インタビュー多様な素材広く発信を/来年の東北DC好機に

紺野 純一
紺野純一氏(東北観光推進機構専務理事/東北DC推進協議会事務局長)
新型コロナウイルス感染症の影響を受ける観光業界。コロナ時代の観光について、東北観光推進機構の紺野純一専務理事(70)に聞いた。

—日本大震災から間もなく10年を迎える。
「全国的にインバウンド(訪日外国人客)が拡大する中、震災の影響で東北は後れを取ったが、2015年に震災前の水準に戻った。トップセールスや直行便の誘致活動など東北が一体となってインバウンド誘致に努め、東北の外国人延べ宿泊者数は19年に168万人泊と政府目標を1年前倒しで達成した」

—ところが新型コロナが観光業界を直撃した。
「大変厳しい状況だ。観光は裾野が広く地域全体に影響が及ぶ。まずは各県の施策による県内流動、次の段階は当機構の『東北・新潟応援!絆キャンペーン』など域内観光に向けた取り組み、そして政府の『Go To トラベル』につなげた。一部では観光客が戻りつつあると感じている」

—コロナ時代の観光はどうあるべきか。
「(近隣を旅行する)マイクロツーリズムが広がっている。観光地として注目されていなかったが、実際に訪れると非常に素晴らしい地域の観光資源は東北にたくさんある。例えば岩手県山田町のカキ養殖。以前は漁業だけの視点だったが、体験型のかき小屋で観光の魅力になった。東北には春夏秋冬それぞれに織りなす景観、地域に根差した祭りや郷土芸能、日本酒を含めた食が豊富にある。その多様な素材を広く発信していくことが重要だ。長期滞在できる仕組みづくりも需要の底上げになる」

—来年4〜9月、JRと共同で大型観光企画「東北デスティネーションキャンペーン(DC)」を実施する。
「千載一遇のチャンスだ。東日本大震災から10年目。太平洋沿岸に約千キロのみちのく潮風トレイルが整備され、震災遺構や語り部が震災学習として修学旅行に取り入れられるなど、新しい動きを交流人口拡大につなげていくことができる。各地に誕生しているDMO(観光地域づくり法人)の連携を強化し、地域に活力を生み出していくことも大事だ」

—今後の東北の観光振興に提言を。
「少子高齢化時代、海外マーケットの復活を視野に観光で交流人口を増やすことは必要だ。キーワードは東北の連携。東北全体でみれば、紅葉なら北から南へ1カ月かけて楽しめる。桜はその逆。果物の種類も豊富だ。青森、岩手、秋田にまたがる『北海道・北東北の縄文遺跡群』はいずれ世界文化遺産になると思う。豊富な観光素材を東北全体で発信しながら販路を開拓していくべきだ」

渡邉 政嘉

プロフィール

紺野 純一

こんの・じゅんいち 1968年国鉄入社。87年JR東日本入り。福島・仙台駅長、仙台ターミナルビル専務取締役ホテル事業本部長兼ホテルメトロポリタン仙台総支配人など歴任。2015年東北観光推進機構専務理事。東北DC推進協議会事務局長も務める。70歳。福島市出身