食山形ならではの酒を国内外に売り出すブランド戦略を加速
都道府県単位のGI指定はワインの「山梨」(山梨県)、焼酎の「琉球」(沖縄県)「薩摩」(鹿児島県)などがあるが、清酒では初。指定により消費者の信頼性や知名度の向上、国内消費と輸出の拡大といった可能性が広がる。
山形県酒造組合の仲野益美会長は「ワイン好きがボルドーやブルゴーニュに出掛けていくように、山形を訪れる外国の観光客が増えれば、地元に恩返しができる」と「GI効果」を展望する。同組合は認定酒に貼付するシンボルマークを作成したほか、海外市場として有望な香港、ロシアでキャンペーンを展開する。
県内54の酒蔵は土地の気候風土を反映した酒を育んできた。県独自の酒米開発、杜氏(とうじ)の技術研修などに取り組む中で、県全体で酒造技術を底上げする機運が高まったのが1987(昭和62)年。酒造会社の若手経営者、技術者、県工業技術センターの職員らが「県研醸会」を設立した。蔵元の壁を超え、技を隠さずに見せ合い、刺激し合うことが醸造技術の向上につながった。仲野会長は「山形の酒造りのベースには高い技術と団結力がある」と胸を張る。
今春には酒造好適米の新品種「雪女神」を使った県産酒がデビュー。「出羽の里」と「蔵の華」を交配した品種で、雑味となるタンパク質が少ないなど高級酒に向く特性を持つ。GI効果と合わせ、県酒造界は国内外に「山形の酒」の魅力を発信する絶好の機会を迎えている。
(山形新聞)