とうほく創生Genkiプロジェクト in 山形

東北6県の主要新聞社7社で構成する東北七新聞社協議会は「とうほく創生Genkiプロジェクト フォーラムin山形」を10月31日、山形県天童市の天童ホテルで開いた。
健康講座や基調講演に続き、「人がにぎわい、豊かさを実感する社会へ|東北から未来を創(つく)る」をテーマにパネル討議を行い、約420人の聴衆とともに東北に人を呼び、活性化させるヒントを探った。

山形大医学部付属病院長 久保田功氏

専門講座

山形大医学部付属病院長久保田功氏

くぼた・いさお 山形大医学部卒業後、同学部付属病院第一内科に入局。公立置賜総合病院診療部長、山形大医学部教授、同学部副学部長などを歴任。2010年から同学部付属病院長。専門分野は内科学。東京都出身。61歳。

日本人の死因で最も多いのががんだが、これは5大がんなどを含めた総称であり、亡くなった人を比較すると、がんで最多の肺がんは7万人で、脳卒中は12万人とはるかに多い。
しかも脳卒中はうまく食べ物を飲み込めない、歩けないといった後遺症を残すこともある。寝たきりの原因にもなりやすい。脳卒中はやはり重要な病だ。

脳卒中には大きく分けて血管が切れる「脳出血」と血管が詰まる「脳梗塞」の二つがある。現在多いのは脳梗塞で、その3分の1が「心房細動」で引き起こされることに注目したい。
心房細動は、心房が収縮できずにけいれんして起きる。心房の中でよどんだ血が凝固し、塊がはがれて運悪く頭の血管に流れ、それが詰まると大きな脳の障害を引き起こす。若いうちは起きにくいが、特に60歳を超えると発症の割合が増える。

山形大は脳卒中と心筋梗塞に関し、4年前から県の委託を受け、実際にどれくらいの患者さんがいるかを調べる発症登録事業を行っている。
発症数は心筋梗塞の年間600人に対し、脳卒中は6倍の3600人。このうち心房細動が原因だったのが、心筋梗塞をやや上回る700人だ。こうした実態が調査で明らかになってきている。

心房細動の予防のため、これまで抗凝固薬のワルファリンという薬が使われてきたが、これは人によって効果が違ったり、緑黄色野菜や納豆を食べると効果が低くなったりするなど使いづらい面があった。しかし、数年前から薬効が一定で、食事制限もない新薬が何種類か販売されており、医師が使いやすい状況になっている。

脳卒中は高齢化率が高い東北では最も注意すべき病気だ。高齢者が増えている分、心房細動による脳卒中も多くなっている。
問題は、かなりの確率で予防できるにもかかわらず、この病の認知度がまだまだ低いことだ。健康診断で心房細動だと判明したらすぐに医療機関を受診してほしい。脈を測り、ばらばらだと感じたらすぐに医者に伝えてほしい。高齢者が元気に活躍するためには、心房細動による脳卒中の予防に努めることが最も有効な策の一つだと言える。

石破茂地方創生担当相

基調講演

石破茂地方創生担当相

いしば・しげる 1986(昭和61)年の衆院選で初当選。防衛相、農水相、自民党幹事長などを歴任し、2014年9月から地方創生担当相。鳥取県出身。58歳。

歴代政権が地方の発展を考えてきた。田中角栄内閣の日本列島改造論、大平正芳内閣の田園都市構想、竹下登内閣のふるさと創生論と、いずれも卓越した発想だった。しかし、当時は「失敗したら日本が終わる」という危機感はなかった。そこが地方創生との大きな違いだ。

冷戦構造、経済成長、人口増加、地価上昇という戦後日本の繁栄を支えた条件も崩れている。政策を根本から変える必要がある。

人口が集積し、情報や文化、金融などの中心として東京は今後も日本をけん引する責任が求められる。一方で食料や再生可能エネルギーを生産できるわけでなく、出生率は全国最低。そんな東京だけが残る日本であっていいはずがない。

東京には1955〜70年に全国の地方から500万人が移り住んだ。この人たちの高齢化が進む。一方、地方は高齢者の人口が減り始める。このままでは医療・介護人材が流出し、再び大きな人口移動が起きる。

65年からの10年間、公共事業と企業誘致で、地方も人口が増え、元気だった。今後、子どもを生んでくれる20、30歳代の女性が減り、財政が極めて厳しい中で同じことはできない。東京は東京、地方は地方の特性を最大限生かし、発展していくのが次代に対する責任だ。

農林漁業を考えても、政策が時代に合わなくなってきていたり、コストの切り下げや付加価値向上の可能性があったりと、改善の余地が多い。日本は製造業以外の産業の生産性が低く、まだまだ伸びしろがある。

地方に移り住みたいと思っている元気な50、60歳代には移住をしてもらいたい。地方は人手不足。都会で育んだ能力を生かせるマッチングシステムを動かしたい。東京と往来しやすいアクセスも必要だ。

東京近郊の住宅を貸したり、売ったりするための中古住宅市場の確立や、50〜60歳代の人に地方大学でもう一度学んでもらうことも大事。高齢者になってから移住するのでなく、中高年の人たちが生涯活躍し、介護が必要になるのをできるだけ防いでいく政策を展開したい。

本年度中に総合戦略を策定してもらうよう全自治体に要請している。策定には産・官・学・金に加え、労働組合と新聞・テレビなど言論機関が加わることが大事だ。地方に人の流れをつくるには労働政策を変えることが不可欠で、地方で何が起きているかを最も知り、発信力を持っているのは地元のメディアだからだ。

市民が参加し、やりっ放しではない行政があり、行政に頼り切りではない民業があるところを国は情報、財政、人材で最大限支援する。残された時間も、政策の選択肢も多くはない。一緒に手を携え、汗を流し、笑い、泣き、新しい日本をつくることがわれわれに与えられた責任だ。

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「とうほく創生」の実現に向け、各界代表が意見を交わしたパネルディスカッション=山形県天童市

小林 今回は地方創生、特に交流・定住人口の拡大を考察する場にしたい。それぞれの果たすべき役割や取り組みを聞きたい。

吉村 恵まれた地域資源を生かし、山形らしい成長の姿を実現する「自然と文明が調和した理想郷山形」という将来ビジョンを掲げている。このビジョンの実現に向け、産業の振興と地域の再生という視点を重視し、4本の成長戦略を展開している。危機意識を持って人口減少問題を捉え、今後の対策を推進するために庁内にプロジェクトチームを設置したほか、10月には山形県版の人口ビジョンと「やまがた創生総合戦略」を策定した。成長戦略を総合戦略で加速させ、東北と日本の創生に貢献したい。

吉村美栄子山形県知事

吉村美栄子山形県知事

小山 若者をいかに育てるかが重要だ。山形県では毎年約1万人が高校を卒業し、50%近くが大学や短大に進学している。このうち東京など県外の学校に進むのは3500人ほどで、就職で戻ってくるのは3割。地元大学の使命として地域創生、次世代形成、多文化共生を掲げ、教育と研究を展開している。

皆川 主な業務は個人事業主や農林漁業者、中小企業向けの3事業で、民間金融機関を補完する立場で機動的な融資をしている。東日本大震災後はセーフティーネットが重要な仕事だったが、今は景気回復で創業や海外展開などへの融資が増加している。全国の支店網と3事業のノウハウを生かした総合力で地域活性化に貢献する。

小林 山形県の人口ビジョンと総合戦略の概要は。

吉村 県人口ビジョンでは、山形県の人口が2060年に79万人程度になり、将来的には72万人程度で推移すると展望している。総合戦略は▽雇用創出▽移住やUターンの推進▽若い世代の結婚・出産・子育て支援▽活力ある地域の創出|の4項目ごとに基本目標と数値目標を掲げており、日本一高い3世代同居率など山形県の特性を生かした結婚支援などに取り組む。地域資源を活用した雇用の創出、郷土の誇りの醸成といった施策を進めたい。

小林 地方創生を考える時、民間との連携によるソフト面のアイデア創出がポイントになる。

小山清人山形大学長

小山清人山形大学長

小山 県民や企業と一緒に学生を育てる時代。(山形県の最上地方全域をキャンパスと位置付ける)「エリアキャンパスもがみ」を展開し、各市町村と地域の方々に協力をいただいて授業に取り組んでいる。ほかに「元気プロジェクト」として、地方を元気にするプロジェクトを学生に提案してもらい、大学が活動をサポートする事業がある。

皆川 全国の458機関と業務連携・協力に関する覚書を締結し、創業や事業再生などに関する協調融資のスキームもつくっている。顧客の利便性向上や地域のプロジェクトに貢献する上で、こうした連携はますます重要になる。公庫の専門性と、民間金融機関の持つ豊富な地域情報と強固なネットワークを組み合わせて支援を続けたい。

小林 東北の活性化には広域的な取り組みも重要になる。

吉村 東北創生への最優先の課題は東日本大震災からの迅速な復興。山形県は避難者やがれきの受け入れを行ってきた。復興に向け、産業振興で雇用を創出し、東北に新たな人の流れをつくることが不可欠だと考えている。東北の高い技術力を生かした自動車関連産業の集積や、地域資源を活用した観光振興などの取り組みを進めることが必要だ。東北には高品質な農林水産物があり、輸出の拡大が不可欠。政府には販路拡大の音頭を取ってほしい。

皆川博美日本政策金融公庫副総裁

皆川博美
日本政策金融公庫副総裁

小山 東日本大震災では、多感な幼稚園児や小中学生が逆境の極みを経験した。そんな東北の若者たちが10〜30年後に活躍してくれることは間違いない。しっかりと育てるのが大学の役割であり、小中高と一体となった教育が必要だ。「世界に山形あり、東北あり」を発信することを使命に、人材育成に努めたい。

皆川 住民自らが変わろうとしないと、地域活性化は不可能に近い。今は公共事業と企業誘致だけで雇用と所得を確保するのは難しい。若者が戻るには、地域の価値の再確認と情報発信が大切。地域ネットワークを生かしたイノベーションも必要だ。東北には魅力がある。総力を挙げ、地域経済を支える企業や農林漁業者をサポートする。

小林 石破大臣に感想を伺いたい。

石破 民間や中央省庁が持つ膨大な情報「ビッグデータ」を活用した地域経済分析システムを公開している。活用し、間違いのない政策を立ててほしい。東北には発展の可能性が多くある。待っているところを支援する余裕は国にはないが、頑張って日本を引っ張るという自治体には情報、資金、人材で後押しする。東北の力で新しい日本を引っ張ってほしい。

  • よしむら・みえこお茶の水女子大卒業後、リクルート勤務、山形県教育委員会委員、山形県総合政策審議会委員などを経て2009年、第50代山形県知事に就任。13年に無投票再選し、現在2期目。山形県出身。64歳。吉村美栄子(よしむら・みえこ)山形県知事
  • こやま・きよひと1968(昭和43)年、山形大工学部繊維工業科に入学。同大大学院修士課程を修了し、74年に工学部助手。92年に教授となり、2004〜07年に工学部長、07年から副学長を務め、14年に学長に就いた。和歌山県出身、山形市在住。66歳。
  • みながわ・ひろみ岩手大農学部卒業後、1975(昭和50)年に農林漁業金融公庫入庫。北海道支店長、顧客支援部長、理事を経て日本政策金融公庫取締役。2011年に常務、13年から現職。秋田県出身。63歳。
共同宣言を行い、手をつなぎ合う東北の主要7新聞社の社長
共同宣言を行い、手をつなぎ合う東北の主要7新聞社の社長

われわれ東北七新聞社協議会は、1995年の設立以来、20年にわたって東北6県の可能性を探るために紙面企画やフォーラムなどを通じ、活動してきました。

今、日本は少子高齢化による人口減少問題に直面しています。近い将来、自治体そのものが消滅しかねないという大変危機的な状況です。全国の中でも、特に東北において、その傾向は顕著です。

しかし、足元に目を投じれば、東北地方は、まだまだ活力を生み出す潜在的な可能性を秘めています。「先人が育んだ伝統・文化」があり「実り豊かな大地」があります。「粘り強く、地道なモノ作りの風土」があり「互いに助け合い、いたわり合う温かい心」があります。何より「郷土を愛し、育て、次の世代に引き継ごうとする強い意志」があります。

われわれ東北七新聞社協議会はこれからも多くの課題を共有し、今置かれている現状に真摯(しんし)に向き合い、提言を行い、議論を喚起し、結果として東北の未来を豊かにする一翼を担ってゆくことを、ここに宣言します。

共同宣言を行い、手をつなぎ合う東北の主要7新聞社の社長
会場には東北の7新聞に掲載された「とうほく創生Genkiプロジェクト」の特集紙面が展示された=山形県天童市