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インタビュー東北のパートナー増やす 農産物一つのブランドに

「東北の農産物のアピールのためにパートナー作りが大切になる」と語る柴田温さん=2022年9月、仙台市

食の分野にも新型コロナウイルスの影響は続いている。ウィズコロナ時代に対応するために、農業や飲食業界はどんな取り組みをするべきか。東北6県を一つの産地として農畜産物の販売強化を図っている「全農東北プロジェクト」事務局専任課長の柴田温氏(58)に聞いた。

ーコロナ禍で東北6県の食の現状は。
「マルシェなどのイベントで東北の農畜産物をアピールする機会が減った。その分、インターネットの通販などに力を入れている。東北6県のコメを集めた『東北六県絆米』は好評を得ている。コロナ禍のために冠婚葬祭での利用が減った花卉(かき)類を盛り上げようと、6県の花を使って自宅で楽しめるようにするセットも販売している。東北の食料自給率は100%を超えており、食の面では、東北だけで自立できる。豊かな食文化がある東北の魅力づくりを進め、国内外に発信しなければならない」

ー新たな食の形を提供する取り組みは。
「今年5月に全農東北プロジェクトのホームページを開設した。モモやナシなどのシーズンや各県の祭りなどのイベント情報を掲載している。ネット上で影響力があるインフルエンサーの協力を得て、旬の農産物の情報や、東北のコメに合う新たな料理の提案などに取り組んでいる。マルシェなどのイベントも少しずつ展開したい。11月に沖縄県でマルシェを計画しているが、東北の農産物を一つのブランドとして『東北の野菜』『東北の果物』として打ち出し、魅力を紹介するつもりだ。東北の農産物の市場は関東が中心だったが、西日本にも広げたい。水際対策が緩和され、今後、海外からも訪れる人が増えるだろう。そうした人たちに、魅力をどう伝えるかが重要になる」

ー東北の明るい未来をつくるための提言を。
「仙台市の専門学校と連携し、東北の食材を使ったメニューを考案してもらっている。学生を対象にした農業体験も行っている。ただの収穫体験ではなく、除草作業や力仕事などを体験してもらい、農業の大変さを知ってもらう。人を育てることに力を入れている。最も重要なのは、東北の食の良さを知ってもらい、応援してくれるパートナーやファンを増やしていくことだ。パートナーが増えれば、口コミや交流サイト(SNS)などで情報が広がっていく。東北の農産物には6県ごとに特長があるが、東北ブランドとして発信を続ければ、人を呼び込む力になる」

柴田温氏

プロフィール

柴田温氏

しばた・あつし 山形大大学院農学研究科修了。1989年全農入会、青果物の鮮度保持技術開発などを担当した。営農販売企画部開発企画室長などを経て2014年総合企画部震災復興課長、2015年全農東北プロジェクト事務局に。2018年から現職。秋田市出身。58歳。