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インタビュー変化を遂げる観光振興の取り組み

東北観光推進機構 紺野純一氏

新型コロナウイルスの感染拡大は観光のスタイルを変えた。アフターコロナを見据え、現状や今後の展望を東北観光推進機構の紺野純一理事長(72)に聞いた。

—コロナ禍が観光に突きつけた課題は。
「インバウンドが2019年まで右肩上がりで伸びていて、東北も168万人泊を達成したが、その後はコロナ禍が大きく影響し、訪日観光客だけでなく国内観光客の動きも急速に鈍化した。そして今まで以上に安全・安心が求められる時代になった。観光客一人一人が明確な目的や価値観を大切にするようになった。観光分野でもデジタル化が進んだ。この3点を課題と捉えている」
|新たな旅行スタイルが求められる。

「コロナ禍は個人のデジタル利用を一気に進めた。以前はある程度パッケージ化された旅行商品を利用することが多かったが、今は旅行前、旅行中、旅行後のそれぞれの場面で独自に交流サイト(SNS)や口コミなどを駆使して自分に最適なものを調べて組み立て、情報を発信する時代になった。旅行を楽しんだ人がSNSで自由に発信した魅力が呼び水となっている。神社などのパワースポットや森林セラピーなどで心の安らぎを求めたり、ロッククライミングなどの体験ものの人気も高まり、近場を旅行するマイクロツーリズムにも焦点が当たっている。共通するのは、本物が求められるということだ。東北各地にはそうした需要に応えられる場所がたくさんある。今あるものをもっと磨き上げて価値を高めていきたい。機構はデジタル化に力を入れ、『Base! TOHOKU』というブランドコンセプトを打ち出し、地域に長期滞在し、周辺エリアを含めた魅力を満喫してもらえるような旅行商品やプラン開発などを旅行会社などと連携して展開している」

—コロナ収束後、東北の観光推進のための提言を。
「東北を旅先に選んでもらうためのキーワードは『広域連携』『融合』『重層的』の三つ。それぞれの地域ならではの独自性を際立たせ、それらを組み合わせて広域に展開する。桜の場合、1カ所での開花時期は短くても前線を追っていけば1カ月楽しめる。そこにさまざまな業種が参画して滞在をおもしろくする。東北は長期滞在が楽しめる潜在力を持っている。そういった魅力にあふれた場所であることを発信し続けていきたい」

紺野純一

プロフィール

紺野純一

こんの・じゅんいち 1968年国鉄入社。87年JR東日本入り。福島駅長、仙台駅長、仙台ターミナルビル専務取締役ホテル事業本部長兼ホテルメトロポリタン仙台総支配人などを歴任。2015年東北観光推進機構専務理事。22年から理事長を務める。72歳。福島市出身