インタビュー東北の強み前面に/産業の潜在力生かす
東北には豊かな自然や食があり、産業面でも潜在力がある。経済産業省東北経済産業局の戸辺千広局長(54)に今後の展望を聞いた。
ー東北の発展に必要なことは。
「東北には雇用の場がある。12月の有効求人倍率は1・41倍で全国平均を上回っている。半導体関連産業の集積が進んでおり、生産設備も整っている。自動車関連産業も集積している。コロナ禍で2年以上、影響を受けたが、全国的な製造業の回復水準を上回っている。国際的な供給網の中で、東北の強みと位置付けて必要な支援をしていく」
ー人手不足が課題だ。
「若い人たちには、自分の能力を発揮できる場所が地元にあると知ってほしい。そのためにインターンシップが有効だ。半導体関連の70程度の企業と大学、高専の関係者で東北半導体・エレクトロニクスデザイン研究会を立ち上げ、人材育成・確保の議論を始めている。企業のインターンシップに地元学生の参加を促している。研究会と東北大が連携し、学生向けに半導体加工を体験してもらうプログラムも始める」
ー今後、必要な取り組みは。
「温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルが重要だ。これに取り組まないと国際競争で生き残れない。東北は再生可能エネルギーのポテンシャルが高い。風力発電は青森県と秋田県が先行し、太陽光発電も進んでいる。関連企業の集積が進みやすいと思う。仙台市で次世代放射光施設『NanoTerasu(ナノテラス)』の整備が進められている。物質の詳細な分析が可能になる。企業も利用でき、商品開発や事業高度化に貢献できる」
ー事業承継を進めるのも必要だ。
「黒字経営なのに後継者がいないという企業もある。地元企業は生活インフラの一つ。親族経営の場合が多いが、親族以外の第三者や従業員が受け継ぐ選択肢があっていい。現在の経営者が高齢になる前に考えてもらう必要がある。そのために国は承継前からさまざまな支援メニューをそろえ、金融機関と連携して取り組んでいる」
ー東北の未来へ提言を。
「東北経済産業局の若手職員8人が組織理念『共感』『協奏』『変革』のもと、『おらほの輪プロジェクト』を展開している。東北で頑張っている人たちと接点をつくり、悩みを聞いてどんな支援ができるか考えている。東日本大震災から12年が過ぎた。福島復興局に勤務した際、そういった人たちから元気をもらった。人のネットワークづくりが重要だ。若者たちが共に今後の東北をつくっていく必要がある」
プロフィール
戸辺千広氏
とべ・ちひろ 東京大教養学部卒。1992年通商産業省(現経済産業省)入省。外務省在イタリア日本国大使館参事官や官房参事官を経て、2020年から2年間、復興庁福島復興局次長を務めた。2022年7月から現職。東京都出身、宮城県育ち。