インタビュー地域全体で企業育てる 起業家マインドを醸成
新型コロナウイルスの影響や資源高騰などが続き、東北の企業も打撃を受けている。新産業創出や人材確保、事業承継などにどう取り組むべきか。中小企業を支援している中小企業基盤整備機構東北本部長の宮本幹氏(61)に聞いた。
ー企業は苦しい状況が続いている。
「われわれが支援している対象の約7割が製造業だ。専門家派遣などさまざまなメニューを用意し、昨年度から地域経済振興支援事業として自治体と連携した面的な展開を始めている。地域ごとのニーズを把握しながら、人材確保や若年層の流出防止などに取り組んでいる。今後はデジタルトランスフォーメーション(DX)化への支援も重要だと考えている。IT経営簡易診断などを行っているが、DX計画を作るだけでなく、各企業が基幹システムにどう実装していくかを支援していく必要がある。経営者は高齢化しており、スムーズな事業承継も大切だ」
ー現状を打破するための具体的な取り組みは。
「大学発のスタートアップなどへの創業支援が重要と考えている。東北の地で若い人たちが働きたくなるような企業を1社でも多く生み出すことが求められる。起業家らがビジネスプランを発表し、キャピタリストや経営者らにアドバイスしてもらう事業を企画している。今年度末までにスタートさせたい。仙台市を皮切りに、東北6県をキャラバンのように回り、起業家が助言を受ける場、そして出会いの場にする。東北で新たなビジネスを生み出す機運をつくりたい」
ー東日本大震災の復興支援も続けている。
「東北6県の食材を使った『東北福興弁当』が好評だ。各県の自慢の食材を詰め込んだ幕の内弁当で、10月1日に第11弾を発売した。第10弾までの通算出荷数は70万食を超えた。JR仙台駅や東京駅などで販売しており、豊かな東北の食文化を発信し、活性化につなげたい」
ー東北の産業振興のための提言を。
「中堅以上の企業が地元の中小企業を支援して地域全体で企業を育てていくことが大切だ。京都のように先達が若手への経営指南や技術支援に取り組めば、後進が育ち地域経済が活性化する。金融機関もベンチャービジネスに対して積極的に投資してほしい。若い起業家やキャピタリストを育てる必要がある。学生のうちから学びの支援に取り組み、起業家マインドを醸成できるような地域になってほしい」
プロフィール
宮本幹氏
みやもと・みき 東北大大学院工学研究科修了。1986年地域振興整備公団に入社。独立行政法人化に伴い、中小企業基盤整備機構経営基盤支援部海外展開支援課長などを歴任した。2019年近畿本部企業支援部長、2020年販路支援部長、2022年から現職。大阪府出身。61歳