企業や団体などの取り組みに注目

東北地方の現状をどう見ているか。
「東北は広大な地域に魅力を持つ企業や産品、名所が点在している。特に観光や食などはまだまだ未開拓と言える。潜在的な資源に光を当てるには新たな価値を生み出すプロデューサーのような存在が重要になる」

観光では訪日外国人(インバウンド)の誘客が国内の他地域に比べ出遅れている。
「個々の観光地を見ていくと面白い取り組みはある。宮城蔵王キツネ村(宮城県白石市)は英語に対応した表示など外国人向けの情報発信の充実、加茂水族館(山形県鶴岡市)はクラゲに特化した幻想的な展示手法という特色が誘客に結びついている。青森県津軽地方の地吹雪体験ツアーは『北国の厳しい冬』を、外部の人にとっての未知の体験と捉えた。この発想の転換が話題を呼んだ。大切なのはどんな顧客をターゲットにし、どんな価値を提供するかだ」

食の分野で東北が成長するには。
「青森県のリンゴは赤い色が中国の消費者に縁起物として支持されている。宮城県山元町のイチゴはIT(情報技術)を取り入れて津波被害を乗り越え、ブランド化に成功した。原石は磨かなければ原石のまま。産品の持つ従来の魅力に、どのような価値を加えるかが成功の鍵を握る。水産業関係では三陸地方の豊かな漁業資源は世界市場を見据え、さらに磨きをかけられると思う。福島では東京電力福島第一原発事故に伴う風評などの影響が続くが、価値をどう生み出すか知恵を絞る時にきている」

地域を支える人材や産業の育成も大切だ。
「人口減少と市場縮小という流れが変えられない中で、人づくりや産業力強化は難しい点がある。地域振興や企業ビジネスの革新を促すためには地元の資源を総結集し、市場調査や販売戦略を後押しする存在が欠かせない。企業(産)、自治体(官)、大学や研究機関(学)、地域金融機関(金)の産官学金がネットワークを築き支える必要がある」

今後の視点を。
「阪神淡路大震災の被災地では復興バブルが収束した後、建設関連需要が全国平均まで回復するのに10年かかった。東北地方も同じ課題に直面しつつある。震災から10年となる2020年までに新たな産業を育てられるかが重要になる。東京五輪の年でもある。16年度のGenkiプロジェクトに登場する企業や団体などの取り組みに注目したい」

藤本 雅彦

プロフィール

東北大学地域イノベーション研究センター長藤本 雅彦

ふじもと・まさひこ 北海道生まれ。東北大教育学部卒、同大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。リクルートに勤務後、サイエンティア取締役を経て2004年に東北大大学院経済学研究科助教授、2007年に教授に就いた。地域イノベーション研究センター長のほか、総長特別補佐、大学院経済学研究科教授を兼ねている。