「恋し浜ホタテ」独自の産地直送で、全国にファンを拡大

恋し浜ホタテを水揚げする佐々木淳さん。特産ホタテが結ぶ人のつながりを胸に、地域の未来を見据える

わずか26世帯の小集落に、「恋し浜」で知られるブランドのホタテガイがある。大船渡市三陸町綾里の小石浜地区。品質にこだわり、若手漁業者らが独自に確立した産地直送で、全国にファンを広げる。東日本大震災から再起した浜の宝は、産地と消費地、人と人を結び続ける。

分厚い身と、濃厚な甘さ。人々を魅了する味わいは、漁場に見合った生産量の制限と、付着物の丹念な除去、ストレスがかからない深度調整など、親世代からの努力のたまものだ。

県産ホタテには県漁連の共販制度があり、指定買い受け人が入札し、一括で扱われる。不況による価格低迷に苦しむ中、考え出したのが、綾里漁協を買い受け人とした直販の仕組み。「食べる人」と顔の見える関係に、生産意欲は高まった。

2008年に「恋し浜」を商標登録し、09年には三陸鉄道の駅名も「小石浜」から改名。だが、活性化に確かな手応えをつかんだ地域に、津波は襲いかかった。

漁船は流され、養殖施設は壊滅。それでも、小石浜の人々は、海に生きることをやめなかった。国内外のファンの支援もあり、1年半余でホタテの出荷再開にこぎ着けた。

小石浜養殖組合ホタテ部長の佐々木淳さん(45)は「生き方、漁への取り組み方が味に表れる。すべては人だね」と語る。佐々木さんらは、多くの人に立ち上がる姿を見せ、こだわりを伝え続けた。共鳴したファンは、自らホタテを仕入れて各地で販売し、魅力や価値の伝道師となる。首都圏の飲食店でも扱われるようになった。

佐々木さんは、積み重ねた交流がいつか「漁業に携わる移住者を生む」と信じ、熱く語る。「ゴールはない。自分たちの世代がいなくなっても、漁業を未来に残る産業にしたい」
 
(岩手日報)