とうほく創生Genkiプロジェクト フォーラム in 秋田

東北七新聞社協議会は、「とうほく創生Genkiプロジェクトフォーラムin秋田」を10月22日に秋田市の秋田ビューホテルで開いた。日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎氏が「夢があるから強くなる」と題して基調講演したのに続き、「とうほくをつなぐ〜新しい東北を発信」をテーマにパネルディスカッションを実施。約210人の来場者と共に、活性化に向け東北の潜在力を掘り起こし、魅力を発信していく方策を探った。

  • パネリスト
  • ■ 日本サッカー協会最高顧問 川淵 三郎氏
  • ■ 秋田県副知事 中島 英史氏
  • ■ 日本政策金融公庫専務取締役 紀村 英俊氏
  • ■ JA全農常務理事 桑田 義文氏
  • コーディネーター
  • ■ 秋田魁新報社編集局長代理 渡辺 伸也
川淵 三郎氏

川淵 三郎氏

渡辺 東日本大震災から6年半余りが過ぎたが、復興はまだ道半ば。それに急激に進む人口減と少子高齢化は東北全体の課題だ。課題を踏まえ、いかにして東北を元気にするか議論を深めたい。まず東北の現状についての考えや取り組みを聞きたい。

中島 2年前に秋田に着任する際は人口減や少子高齢化が深刻で、自殺率も高いなどと周りからマイナス面を多く言われたが、実際に秋田に住んでみた私の実感は逆だ。子育て環境は素晴らしいし、重要無形民俗文化財や民謡など全国に誇れるものがいっぱいある。酒どころでもある東北、秋田はポテンシャルの高い地域だと思っている。

紀村 日本政策金融公庫は国の政策に基づき、金融面でセーフティーネット機能の発揮に努めている。被災地は今なお復興途上にあり、現場のニーズを踏まえつつ腰を据えて着実に役割を果たしていきたい。今後の東北の発展のために創業・新事業の支援、新規就農者や6次産業化への支援などに力を入れていく。

中島 英史氏

中島 英史氏

桑田 JA全農は新たな産地づくりで被災地の農業再興を図るとともに、「東北ブランド」で販路を一層拡大しようと東北6県プロジェクトをスタートさせた。今まで各県ばらばらに特産品を売っていたが、これらを一括して販売していく。日本の農畜産物流通に一石を投じるチャレンジであり、東北の食の輪を全国に広めていきたい。

川淵 私は日本トップリーグ連携機構の会長も務めている。サッカーなどボールゲーム9競技の競技力向上や運営活性化のため活動している団体だが、痛切に感じるのはガバナンス(組織統治)がなっていない競技団体が少なくないということ。発展への道筋を真剣に考えられるトップの存在は極めて重要であり、それはどの組織にも言える。
紀村 日本政策金融公庫は国の政策に基づき、金融面でセーフティーネット機能の発揮に努めている。被災地は今なお復興途上にあり、現場のニーズを踏まえつつ腰を据えて着実に役割を果たしていきたい。今後の東北の発展のために創業・新事業の支援、新規就農者や6次産業化への支援などに力を入れていく。

紀村 英俊氏

紀村 英俊氏

渡辺 それでは東北エリアの課題について具体的に考えていきたい。それぞれの立場で何を問題として捉え、どう対応しているのか。

川淵 東北に限らず日本で人口減や少子高齢化が進むことはずっと前から分かっていた話。なのに行政は思い切った対策を打ってこなかった。人口が減るのは必然なんだから、例えば秋田県の人口が70万人、60万人になった時、秋田人としてどう生きていくのか。これを今からしっかり考えるべきではないか。

中島 秋田は課題の先進県といわれるが、中でも一番問題なのは若者の流出であり、人口減の主因になっている。これをどうにかして止めなければならない。若者にとって魅力ある雇用の場の確保や女性が働きやすい職場づくり、それに秋田から出た子どもたちがいずれ戻ってきて働ける環境づくりを急ぎたい。

桑田 義文氏

桑田 義文氏

桑田 東北の食という観点で言えば、食を生産する農家の減少と農産物を食べる消費者の減少の二つが大きな課題。いずれも全国に比べ東北の減少率は高く、農業が盛んな東北への影響が懸念される。このため国は農地集積による大規模経営や農産物の輸出という方向性を示している。

紀村 被災地の復興加速が最優先課題の一つだ。ハード面で復旧した企業でも操業休止中に販路を失ったりして回復できないケースが目立つ。人口減や内陸部への転居などによる沿岸部の人手不足も深刻だ。このため公庫では全国の支店ネットワークを生かし、販路開拓支援などにきめ細かく取り組んでいる。

渡辺 課題を解決するためには何が必要なのか。東北の未来を切り開いていくための提言をお願いしたい。

中島 東北各県が協力し、付加価値の高い新たな産業分野に参入していくことが重要だ。秋田が東北の他県に先駆けて取り組みを始めた航空機産業、波及効果が大きい自動車産業については東北一体となった研究・推進組織が発足している。こうした動きを雇用創出だけでなく観光振興や文化の発信力強化につなげていきたい。

紀村 超高齢社会の到来や加速する人口減などを考えると、地域活動の担い手として女性に一層活躍してもらうことが重要な意味を持つ。地域を越えたネットワークづくりを進めながら、女性起業家や女性経営者をしっかり支援していく。「仕事が人を呼び、人が仕事をつくる好循環の創造」が東北には必要だ。

桑田 地域を維持していくためにも、一生懸命努力している農業者が営農を持続できるようにするのが私どもの使命。JAグループで作業受託したり、地元企業との6次産業化をコーディネートしたりして東北農業の振興に努めたい。学校給食を全て国産素材とするなど「将来の消費者づくり」にも力を入れたい。

川淵 地域を元気にする要は、やっぱり住民が勇気づけられるスポーツだと思う。大規模なアリーナを造って地域が活性化した成功例は国内外で多くある。幼稚園などを組み込んだりしてみんなが集まるような新たなアリーナ文化を秋田で創ってはどうか。従来の延長線上で考えていては、大きな飛躍は望めない。

  • かわぶち・さぶろう 早稲田大在学時からサッカー日本代表となり、1964年東京五輪出場。91年のJリーグ設立で初代チェアマンに就任、2002年日本サッカー協会会長、12年から現職。日本バスケットボール協会会長も務め改革を推進。大阪府出身。80歳。
  • なかしま・ひでふみ 九州大工学部卒。1987年に通産省(現経産省)に入り、九州経済産業局地域経済部長、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)特命参与兼地熱部長などを経て、2015年4月から現職。熊本県出身。54歳。
  • きむら・ひでとし 慶応大経済学部卒。1982年に通産省(現経産省)に入り、資源エネルギー庁電力市場整備課長、中部経済産業局長、経産省大臣官房付などを歴任。2013年に日本政策金融公庫常務取締役となり、14年6月から現職。山口県出身。57歳。
  • くわだ・よしふみ 早稲田大法学部卒。1983年に全国農業協同組合連合会(JA全農)に入り、福岡支所畜産生産部事業管理課長、本所畜産生産部総合課長、同部長など歴任。2014年に畜産総合対策部部長となり、15年7月から現職。東京都出身。57歳。

基調講演 / 日本サッカー協会最高顧問 川淵 三郎氏

日本サッカー協会最高顧問 川淵 三郎氏

ワールドカップ(W杯)常連となったサッカー日本代表だが、25年前はアジアでも弱い存在だった。1964年の東京五輪に出場、日本サッカー協会強化本部長などを務めた後、会社(古河電工)勤めに専念しようとしていた88年、関連会社への出向を命じられた。がくぜんとしていたら、日本サッカーリーグ(JSL)から責任者である総務主事に招請された。

世界中の人がサッカーを好きなのに、当時国内では1万5千人規模の専用競技場は皆無。1、2部28チームが所属していたが実際の観客数は年間20万人いたかどうか。強くなればファンが増えると思いサッカー界に復帰した。

しかし、運動能力が高い人は野球選手を目指す時代であり、強力なレベルアップのためプロ化を決意した。

企業スポーツだった当時、チームの多くが赤字。人気も実力もない。プロ化はばかな選択とも言われた。企業の延長ではない、地域に根差すクラブをコンセプトにチームの法人化、ナイター設備を備えた1万5千人規模の競技場確保など、七つの厳しい参加条件を設けたが、予想を超える20チームが応募した。

人口4万5千人の茨城県鹿嶋町(当時)の住友金属もその一つ。Jリーグスタート時の10チームの枠に入るのは無理だろうと思っていた。ところが、参加意欲は強く、国内初の1万5千人の屋根付き専用競技場建設を決めたのだ。思い切ったビジョンで夢を実現させた実例とするため加入を認めた。

バスケットボール界の改革に乗り出したのは、2014年に元男子日本代表監督で、秋田いすゞ自動車を日本一に導いた小浜元孝さん(今年1月死去)の訪問を受けたことが端緒。ナショナルリーグ(NbL)とbJリーグに分かれていては、国際連盟(FIBA)から国際試合が禁じられ、リオ五輪予選も出場できなくなると訴えた行動に突き動かされた。

バスケットボール協会、bJ、コミッショナーの代表を集め協議した。が、会長の辞任や国際試合はいらないといった意見なども噴出。結局、出場禁止処分を受けた。処分解除を急ぐには、サッカーで5年かかった改革を5カ月で行うことが求められた。強力なガバナンスと経営力が不可欠と考え、会長に就任し改革を断行。翌15年8月に処分は解除された。

処分解除の要因となった統合bリーグへの参加条件として5千人規模のホームアリーナ確保を掲げたら、ひどく陰口をたたかれたが「客を呼ぶのがプロの矜持(きょう・じ)」という信念があり、気にしなかった。

地方創生を目指すなら、秋田はバスケが最適。かつての〝王国〟であり、冬場に屋内で観戦できる。秋田のバスケを国内外に発信してほしい。沖縄では1万人収容のアリーナ建設が予定され、サッカーでは鹿嶋の成功例がある。高いビジョンの実現には、常識に反するようなコペルニクス的転回の発想が必要だ。

東北7新聞社共同宣言

共同宣言

フォーラムでは最後に、東北七新聞社協議会の2017年度代表を務める小笠原直樹・秋田魁新報社社長、塩越隆雄・東奥日報社社長、東根千万億・岩手日報社社長、一力雅彦・河北新報社社長、寒河江浩二・山形新聞社社長、高橋雅行・福島民報社社長、五阿弥宏安・福島民友新聞社社長の7社の社長が登壇した。

7社を代表して小笠原直樹・秋田魁新報社社長が共同宣言を読み上げた。宣言の全文は次の通り。

われわれ東北七新聞社協議会は、2015年度より「とうほく創生Genkiプロジェクト」として地方創生に取り組んでおります。東北地方で顕著にみられる少子高齢化、地方過疎化の波を乗り切るため、観光や産業、食の分野における6県の先駆的事例を新聞を通じて地域に共有させることで、活力を生み出そうと展開しております。

今年は「とうほくをつなぐ」をテーマに、訪日外国人観光客の誘客や域外への情報発信、そして時代を切り開く企業の取り組みなどを紙面で紹介しました。本日のフォーラムを通して、地域に活力を生み出すのは人の力であることを改めて感じています。

このプロジェクトは、2020年までの長期的視点で地方創生に関わる課題解決に取り組む計画です。東京オリンピック・パラリンピックで日本が世界から注目を集める機会に東北の魅力を発信するため、私たちは今後より一層、東北人に潜在する力を引き出す、その一翼を担い続けることをここに宣言します。

「とうほく創生Genkiプロジェクト」の特集紙面や事業の経緯を
紹介するパネルも展示

パネルも展示

フォーラムの会場前には東北の新聞7社に掲載された「とうほく創生Genkiプロジェクト」の特集紙面や事業の経緯を紹介するパネルも展示され、来場者が見入っていた。

【主催】東北七新聞社協議会(東奥日報社、秋田魁新報社、岩手日報社、山形新聞社、河北新報社、福島民報社、福島民友新聞社)

【協賛社】イオンリテール東北カンパニー、日本政策金融公庫、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会、明治安田生命保険、ポーラ、ヤクルト本社ほか

【協力】中小企業基盤整備機構東北本部

【後援】青森県、秋田県、岩手県、山形県、宮城県、福島県