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人・産業北国の知恵生かし食品を長期保存

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リンゴを貯蔵する実験用の氷温庫を紹介する鳴瀨社長=8月23日、青森市
長く厳しい青森県の冬。家庭用冷蔵庫の普及や流通が発達する以前は、県民は冬の食料確保に一苦労していた。そこから「寒干し」「寒仕込み」などの食料の保存性を高める知恵が生まれ、受け継がれていった。

青森市の大青工業は、先人の知恵を応用し、鮮度を保ったまま食品を長期保存できる冷蔵機器を開発、製造販売している。食品が凍り始める直前の温度「氷温」を維持し、鮮度やおいしさを保つ。庫内温度のばらつきを0・05度以下に収める高い技術が特長だ。

「寒干しにはうま味を凝縮させる効果もある。これは北国の『恵み』と言える」と鳴瀨正彦社長(55)は強調する。

氷温を使った冷蔵機器は主に、青森県の特産品であるリンゴやニンニク、ゴボウ、活魚などの貯蔵に使われている。近年はかんきつ類やパイナップルなど南国の作物にも応用。遠隔地でのメンテナンスを容易にするため、人工知能(AI)と「モノのインターネット」(IoT)を使った冷蔵機器の導入も始めている。

「農産物の高付加価値や出荷時期の調整が可能になれば、生産者の収入増につながる。地域経済やあらゆる産業に波及する氷温技術をもっと広めたい」と鳴瀨社長は意欲を示す。

(東奥日報)