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人・産業避難指示解除の村で奮闘/福島の鍛冶職人二瓶さん

質の高い刃物を目指し金づちを振り続ける二瓶さん=9月17日、福島県飯舘村
元幼稚園舎を改装した工場内に、甲高い金属音が響き渡る。東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が一部を除いて解除された福島県飯舘村で、鍛冶職人の道を踏み出した二瓶貴大さん(41)が金づちを振るう。

福島市の金物屋「刃物の館やすらぎ工房」の4代目。2011年から鍛冶が盛んな新潟県三条市で修業を積み、職人としての技を本格的に学んできた。工場の建設先を探していたとき、避難指示が解除された飯舘村にある旧幼稚園舎を紹介された。炉などの機械を整備し、19年、原発事故後初の村内進出企業となった。

工場では現在、大きさや種類の異なる約20種類の刃物を製造する。牛刀や菜切り包丁、ペティナイフなど、多様な刃物は評価が高く、海外への販売も好調だ。

この場所で二瓶さんの新たな挑戦も始まった。それは刀匠として日本刀を作り上げること。仕事の傍ら同市の刀匠の元に通い、日本刀づくりの基礎を学ぶ。

「今後は鍛冶の体験教室も開きたい。この地の活動を通じて村のことを知ってもらい、多くの人が集まる場所になってほしい」。二瓶さんは思いを胸に金づちを振り続ける。

(福島民友)