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インタビュー活きる食/ざくざく掘り起こす 産地と消費者 縁結び次々 仙台の全農直営店「グリルみのる」 料理長 小齋悟史氏

小齋悟史
こさい・さとし 宮城調理師専門学校(現宮城調理製菓専門学校)卒。仙台市のホテルのレストラン勤務、栃木県の高速道路サービスエリアのレストラン料理長などを経て2016年から現職。復活させたカツ丼は宮城県名取市の商業施設「かわまちてらす閖上」で提供されている。仙台市在住、39歳。名取市出身
全農は2016年、東北の農畜産物と農業をPRする地産地消の飲食店「グリルみのる」「みのりカフェ」を仙台駅隣のエスパル仙台に出店した。グリルみのるの小齋悟史料理長(39)に東北の食と農業について聞いた。

—グリルみのるではどんな食材やメニューを提供しているか。
「東北6県で肥育している全農のブランド牛『東北和牛』をはじめ、各県のブランド豚や鶏肉、フルーツなど。野菜は宮城産が中心だが、仙台の郷土料理のずんだ餅に使っている枝豆は秋田や山形産。年2回メニューを改定し、今は仙台名物の三角油揚げをピザ仕立てにして、秋田産のとんぶりをトッピングした商品も提供している。新型コロナウイルスの影響で休止していた人気の野菜ビュッフェは11月中に再開する予定だ」

—メニューをつくる上で苦労した点は。
「東北には食べたことがない食材もあり、生産者や現地の人たちに普段の食べ方などを聞きながら調理法を考え、商品開発を進めている。いろいろな食材に携われるのは料理人冥利(みょうり)に尽きる」

—グリルみのるは、生産者と生活者をつなげる全農の「みのりみのるプロジェクト」の一環だ。
「使っている食材の産地を全部説明できるのが売り。生産者が見えることは安心、安全につながる。店を拠点に農家の良さや苦労を発信する一方、『おいしかった』とのお客さまの声を農家に届ける役割もある。年に数回、店のスタッフが農家で収穫体験を行っている。宮城県山元町で農業体験した際には、生産者からシルクスイートという品種の干し芋を紹介してもらい、それがきっかけで新メニューが生まれた」
「地元の専門学校と協力して、東北の野菜や果物を使ったカフェメニューやスイーツを開発し、期間限定でメニュー化する企画も実施している。未来の農業の語り部を育成したい」

—東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区出身。同地区にあった食堂「ももや」の人気メニュー、カツ丼の復活にも尽力し昨年、閖上の商業施設で提供が始まった。
「ももやのカツ丼は小さい頃から慣れ親しんだソウルフード。食堂の経営者家族が全員犠牲になったことを知り、自分自身で復活させると決意した。試作を重ね7年がかりで本物の味に近づけた。古里の風景は元に戻らないが、食べ物によって当時の風景や思い出がよみがえる。懐かしみながら食べる人たちを見て、料理人をやっていて良かったと思った」