リンゴ果実を発酵させた発泡酒「シードル」は、リンゴ生産量が青森県内一の弘前市を代表する味覚の一つだ。リンゴの甘みと酸味、香りを堪能でき、炭酸でさっぱりとした口当たりが特徴。2014年には弘前市が「シードル特区」に認定され、小規模事業者でも製造できるようになった。
ゴクゴク飲めるシードルを造ろう─。4年前、同市のリンゴ園「もりやま園」の森山聡彦代表(48)が追い求めたのは「ビールのようなシードル」造りだった。
同社のブランド化に携わったメンバーらとバーベキューをしながら世界中のシードルを飲み比べたが、どれも「甘すぎた」。理想の味に適していたのは未成熟の摘果リンゴだった。
成熟前に余分な果実を間引く摘果によって廃棄されるリンゴは、成熟した果実に比べ苦味成分が多く残っているという。摘果リンゴをビール酵母で発酵させた「テキカカシードル」は、すっきりとしたキレのある飲み口に仕上がり、19年の国内シードル品評会で最高賞に輝いた。
明治時代から続くリンゴ園を引き継ぐ森山代表は「摘果リンゴを活用し、地域全体で100億円産業を目指したい」と語った。
(東奥日報)