Genkiプロジェクト・フォーラム採録

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「とうほくで いきる」をテーマに意見交換したパネル討論=2020年11月29日(オンライン配信画面より、背景の画像は星野リゾート提供)

東奥日報社などで組織する東北七新聞社協議会主催の「とうほく創生Genkiプロジェクト」の総括フォーラムは2020年11月29日、「とうほくで いきる」をテーマに東京都内で開かれた。同プロジェクトの最終年度となった今回は、PR大使のAKB48チーム8の東北代表4人が、プロジェクト6年の歩みを紹介。金融、農業、観光の各分野の専門家3人によるパネル討論を行い、東北の活性化策と将来像を探った。フォーラムは新型コロナウイルス感染防止のため、オンラインでライブ配信した。

パネル討論要旨/岡崎氏・コロナ 地元見直す機会/佐藤氏・魅力発信オール東北で/竹本氏・就農者増やし農業守る

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コロナ対策のため、スタジオからオンライン中継で行われたパネル討論=2020年11月29日、東京都内

  • パネリスト
  • ■ 日本政策金融公庫特別参与 岡崎 文太郎(おかざき・ぶんたろう)氏
  • ■ 全国農業協同組合連合会常務理事 竹本 尚史(たけもと・しょうじ)氏
  • ■ 株式会社「刀」エグゼクティブ・ディレクター 佐藤 大介(さとう・だいすけ)氏
  • コーディネーター
  • ■ 東奥日報社執行役員東京支社長 松林 拓司(まつばやし・たくじ)氏
  • 司会
  • ■ フリーアナウンサー 中村 雅子(なかむら・まさこ)氏

「とうほくで いきる」をテーマに行われたパネル討論の要旨は次の通り。

松林 東北の現状と課題をどう見る。

竹本尚史氏

竹本尚史氏

竹本 農業産出額から東北を見ると、2018年の全国の農業産出額は合計9兆円。東北はその中の1兆4千億円を占めている。特にコメ、果実では全国の4分の1前後。東北を全て合わせると全国の16%で、北海道の14%を上回る。日本の食を支えているのはまさに東北だと言える。一方で農業生産の現状は高齢化で離農が進む。就業人口は、25年前は全国で400万人、東北で70万人いたが、直近の17年は全国で180万人、東北では30万人と約6割減った。
高齢化の進行で、高齢者向け商品の市場規模は約20兆円。市場は今後も拡大すると思われる。また、単身、2人世帯といった少数世帯の増加で外食・中食は拡大しており、今後も新型コロナウイルス感染拡大の影響で中食市場は増えていくと思う。共働き世帯は1980年に比べ約2倍。家庭内での調理シーンは確実に減少、簡素化し、簡便・即食になっている。

佐藤 観光面で言えば、新型コロナの影響で旅館、土産物屋、観光事業者、飲食店などは大変厳しい状況だ。その中で考えなければならないのは、どの事業者も同じように影響があり、かつ「Go To トラベル」や「イート」のキャンペーンが満遍なく救ってくれるかというと、実はそうではない。新陳代謝が起こらなかったり、基礎的に課題がある方々ほど苦しんでいるのが現実だ。ウィズコロナ、アフターコロナにおいては、基礎的な所を高めていく必要がある。この課題を乗り越えない限り、なかなか東北自体が力強くならない。
コロナ禍でも旅への需要は変わっていない中、受け入れる側が魅力を高める必要がある。観光業で大事なことは魅力発信力、客に満足させる力、収益管理力の3点のバランスだ。Genkiプロジェクト2年目のテーマが「とうほくをみがく」、3年目は「つなぐ」だった。東北6県それぞれ違う素晴らしさがあるのだから、競うのではなく、それぞれが価値を磨き上げて高め、つながったときに力強い魅力的な地になる。

佐藤大介氏

佐藤大介氏

岡崎 東北は全国で見ても人口減少率が高い。高齢化も問題で、65歳以上の人口が全国平均の28%に対して東北は32%。15〜64歳の生産年齢人口は減少しており、若い人を中心に東北を離れていく現状がある。理由の一つが企業数の減少。東北は全国の減少率を上回っている。地域に雇用を生み出す事業者をいかに減らさずに増やしていくかということも、「とうほくでいきる」を考える上で重要な視点だ。
日本公庫総合研究所が行っている全国中小企業の動向調査によると、コロナショックが全国でも東北でも極めて甚大な影響を与えており、その水準はリーマン・ショックを上回る。事業者への資金繰り支援で、2020年9月までの半年間の実績は、平時だった18年度の年間実績と比較して件数で1・4倍、金額で2倍となっている。

松林 元気な東北を目指してヒントをいただきたい。

佐藤 東北の観光は広く、薄く、安くで苦しんできた。他と競争して安く売り、質を下げて客が来なくなった。東北には素晴らしく濃い魅力がある。狭い範囲でも構わないから、その濃さに価値を付けて狭く、濃く、高く売っていく。アフターコロナの中、密を避けるという面でも東北がふさわしい。インバウンドを狙うにしても、これからは選ばれたコンテンツを濃く体験してもらうこと。
また、オンラインの活用も大事。魅力や価値をオンラインで発信し、「行ってみたい」「体験してみたい」「食べてみたい」と思わせる。オンラインで魅力を知り、最後はリアルの旅がしたくなる。これが旅行だ。価値の高さを自分たちが信じるためには知ること。知って信じて磨きを掛け、高付加価値化する。それをバラバラに行うのではなく、オール東北、チーム東北で良さを伝えていくことがとても大事だ。

岡崎文太郎氏

岡崎文太郎氏

岡崎 「支える」「つなぐ」「つながる」をキーワードにした、日本公庫の取り組みを紹介したい。現在、民間金融機関と一緒にコロナで影響を受けた事業者への資金繰り支援を行っているが、治療で言えば止血をしている状態。今後の感染拡大によっては傷口が広がる可能性もある。その中で日本公庫、民間金融機関が融資後のフォローに積極的に取り組もうとしている。今後長期にわたる資金繰り支援のためには伴走型が重要。多くの民間金融機関と連携し、「支える」取り組みを進めたい。
「つなぐ」に関して、現在、中小企業の経営者の高齢化による事業承継の問題が起きている。今回のコロナの影響は、これに拍車を掛けると言われている。地域に大事な企業の灯を消すことなく次の世代にバトンタッチする。事業承継は時間がかかる話だが、地域の金融機関とも連携しながらしっかりと事業承継に対応したい。
日本公庫は金融を通じて多くの事業者と接点がある。行政も含め商工団体、金融機関、大学、マスコミなどがつながり、その地域をどのようにしていくか、ベクトルを合わせて考えていくことが重要。公庫は全国ネットワークを持っているので、そのハブ機能の一つとして「つながる」取り組みを推進していきたい。

竹本 高収量・高品質の農業生産の実践・実証が重要になってくる。そのためにはICT技術の活用が不可欠。農業、農家、他企業とのアライアンス(提携)はもとより、食品、加工、食肉製造業者との連携強化を通じ、さらなるバリューチェーンの高度化へと導く必要がある。全農東北は、6県のギフト米セットの販売、銀座三越での6県大収穫祭など、6県本部が一体となって東北全体のブランド力を高めるプロジェクトに取り組んでいる。
新型コロナの下で新たな発見もあった。東京でなくても仕事は可能だ。全農は自然に囲まれた生活の提案、農業就業者や東北のファンを増やし、東北の農業を守り、元気な東北をつくる支援をしている。

松林 最後に一言。

岡崎 新型コロナでリモートワークやシェアオフィスなど新しい働き方が加速していく。若い世代もこの状況に苦しんでいると思うが、あらためて自分の地元、東北を見つめ直す機会になっているのではないか。東北の未来を支える若者たちのためにも、われわれ日本公庫は魅力ある地域づくり、企業の支援にこれからも積極的に取り組んでいきたい。

竹本 全農は東北のファンを増やし、東北の農協を元気にして、東北の豊かな食文化を守り、東北のおいしさを全国の食卓に届けることが使命。これからも全力投球で頑張る。

佐藤 星野リゾートにいたころ、青森で旅館の再生を手伝った。いまだに大好きだし、価値があると思って信じてやまない。ディープでローカルが東北だと思うし、そこに価値が生まれてくる時代がやってくる。

松林 新型コロナによって、私たちは生活様式を変えざるを得ない状況に向き合っている。東北7新聞社が1995年から続けてきた議論は、この時代だからこそ意義を持ってくるのではないか。一連の「とうほく創生Genkiプロジェクト」の議論が、私たちがこの地に生きていく上で、50年、100年後の東北を考える上で、少しでも役に立つことを願う。

AKB48東北代表4人、6年間振り返る
「決して歩み止めない」「さらに東北元気に」

とうほく創生GenkiプロジェクトのPR大使を務めるAKB48チーム8の東北エリア代表メンバー4人が、プロジェクトの6年間の歩みを紹介した。

廣瀬俊朗さん

2015年に山形県天童市で開催したフォーラム。右下は説明役のAKB48チーム8の御供茉白さん=(C)AKB48

山形県代表の御供茉白(みともましろ)さんは、「交流・定住人口の拡大」をテーマに展開した2015年度の1年目の活動を紹介した。同県天童市で総括フォーラムを開き、石破茂地方創生担当相(当時)が基調講演。「人がにぎわい、豊かさを実感する社会へ」と題したパネル討論で地方創生の可能性を探った。

廣瀬俊朗さん

2017年に開催した東北復興大祭典なかの。プロジェクトPR大使の橋本マナミさんも登場した

プロジェクトの一環として、フォーラムに先立ち東京都中野区で開かれた「東北復興大祭典なかの」では、東北の食材で作った「Genkiカレー」を販売した。山形市出身のタレント橋本マナミさんが応援大使として東北の農林水産物の魅力を伝えた。

廣瀬俊朗さん

2016年に福島市で開催したフォーラム。右下は説明役のAKB48チーム8の長谷川百々花さん=(C)AKB48

福島県代表の長谷川百々花(ももか)さんは「とうほくをみがく」をテーマにした16年度の取り組みを紹介。福島市でフォーラムを開き、講演では元衆院議員の東国原英夫氏が宮崎県知事時代の経験談を交えて地方からの発信の大切さを語った。

廣瀬俊朗さん

2017年に秋田市で開催したフォーラム。右下は説明役のAKB48チーム8の佐藤朱さん=(C)AKB48

宮城県代表の佐藤朱(あかり)さんは17、18年度の活動を振り返った。17年度は「とうほくをつなぐ」をテーマに秋田市でフォーラムを開いた。18年度は「とうほくを広げる」と題し、仙台市でフォーラムを開催。大祭典なかのでは16〜18年度にPR大使を務めた橋本さんが東北和牛を売り込んだ。

廣瀬俊朗さん

2019年に盛岡市で開催したフォーラム。右下は説明役のAKB48チーム8の横山結衣さん=(C)AKB48

青森県代表の横山結衣さんは19、20年度の取り組みを紹介した。19年度は「かがやくとうほく」をテーマに盛岡市でフォーラムを開催。AKB48チーム8の東北出身者がPR大使に就任した。

最終年度の20年度は「とうほくでいきる」がテーマ。青森市でフォーラムを開催予定だったが、新型コロナウイルス感染防止のためオンライン開催となった。横山さんは「決して歩みを止めず、この6年間で培われてきた知識や経験を基に、さらに東北を元気にしたい」と結んだ。

7新聞社が共同宣言

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左から山形新聞社 寒河江 浩二 代表取締役社長 / 福島民報社 芳見 弘一 代表取締役社長 / 福島民友新聞社 中川 俊哉 代表取締役社長 / 秋田魁新報社 佐川 博之 代表取締役社長 / 河北新報社 一力 雅彦 代表取締役社長 / 岩手日報社 東根 千万億 代表取締役社長 / 東奥日報社 塩越 隆雄 代表取締役

フォーラムでは東北七新聞社協議会の寒河江浩二(さがえひろじ)・山形新聞社代表取締役社長、芳見弘一(よしみこういち)・福島民報社代表取締役社長、中川俊哉(なかがわとしや)・福島民友新聞社代表取締役社長、佐川博之(さがわひろゆき)・秋田魁新報社代表取締役社長、一力雅彦(いちりきまさひこ)・河北新報社代表取締役社長、東根千万億(あずまねちまお)・岩手日報社代表取締役社長、2020年度代表を務める塩越隆雄(しおこしたかお)・東奥日報社代表取締役が1人ずつ動画で登場。塩越氏が代表して共同宣言を読み上げた。全文は次の通り。

私たち東北七新聞社協議会は、2015年度から「とうほく創生Genkiプロジェクト」として、地方創生に取り組んでおります。

東北地方で顕著にみられる少子高齢化、過疎化の波を乗り切るため、観光や産業、食の分野における6県の先駆的事例を新聞を通して地域が共有することで、活力を生み出そうと力を結集してまいりました。

本年度は「とうほくでいきる」をテーマに、これまで議論してまいりました諸問題に加え、新型コロナウイルスによってもたらされた新たな変化への対応や情報発信、そして時代を切り開く企業の取り組みなどを紙面で紹介しました。本日のフォーラムを通して、地域に活力をもたらすのは東北各地に根を張って生きる人々の力であることを、改めて感じています。

このプロジェクトは本年度でいったんピリオドを打ちますが、私たちは今後もより一層、東北の魅力を発信し、東北で生きるすべての人々に脈々と受け継がれているパワーを引き出す、その一翼を担い続けていくことを、ここに宣言します。