被災者対象に農園プロジェクト
タブレット端末で交流の輪広がる

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岩手県陸前高田市の県立高田病院(田畑潔院長)は、生活不活発病予防などを目的に仮設住宅で避難生活を送る被災者を対象に「はまらっせん農園プロジェクト」を実施している。同プロジェクトでは8月からタブレット端末を導入し、撮影した写真やメッセージで収穫状況などを共有。参加者の交流を図り、生きがいづくりをしている。
「はーい。写真撮るよ」。収穫した野菜を手にした参加者に端末を向けると、笑顔の輪ができた。
プロジェクトは、被災地の医療を支えようと北海道から訪れている同病院内科の高橋祥医師(40)が昨夏、立ち上げた。農作業をすることで病気予防をしようと現在は市内11カ所で実施している。
タブレット端末は協力企業が提供し、希望する9カ所に約30台の端末を貸与した。収穫物や作業風景を収めた写真は、高橋医師がコメントを添えインターネットの交流サイトに寄せられた励ましの声などを盛り込んで配信している。
震災で夫を亡くした佐藤ミエ子さん(73)は「部屋に一人でいることが多かったが今は畑が楽しみ。メッセージに励まされる」と笑顔を見せ、佐々木トモ子さん(71)は「別の畑や友達のことも分かるので安心する」と喜ぶ。
農作業で骨密度が高まり、参加者は達成感も感じているという。高橋医師は「被災地支援の取り組みではあるが、高齢化が進むあらゆる地域で活用できる」と端末を通じた交流のさらなる進展を期待している。

【岩手日報】

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識者インタビュー

東北発・寺山岩手医大教授に聞く

寺山靖夫さん

てらやま・やすお 岩手医大医学部卒。1990年医学博士。清水市立病院神経内科部長、横浜市立脳血管医療センター神経内科医長などを経て、2003年岩手医大医学部神経内科学講座(現在は内科学講座神経内科・老年科分野)教授。主要研究領域は脳血管障害、脳循環代謝、認知症など。北海道千歳市出身、59歳。

高齢化が進むとともに増えているとされる認知症。誰もがなり得るもので、認知症にならずに人生を穏やかに過ごすためにはどうすればいいのか。岩手医大医学部の寺山靖夫教授(神経内科・老年科分野)に聞いた。

 ■認知症はどのような状態をいうのか。
「物忘れは加齢による症状の一つで、病気ではないという言い方ができる。一方で、健常な人がたどる人生の途中で、突然病気で物忘れをするようになることがある。40代でも発症するアルツハイマー型の認知症や脳卒中(脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破裂する脳出血)を発症した後に物忘れをするようになる認知症は病気だ」

 ■主な症状は。
「初期は同じことを言ったり聞いたり、物の名前が出てこないということが多い。症状が進むと同じ物をまた買いに行ったり、通帳を置いた場所が分からなくなる。以前来たことのある場所でも自分がどこにいるのか分からなくなる」

 ■自覚症状は。
「同じことを何度もすると、自分でもちょっとおかしいと思う。失敗したと考えてとても過敏になる」
「身近な家族から間違いを厳しく指摘されるのが、認知症の人はつらい。プライドが傷つき、暴力を振るったり、暴言を吐いたり、性格が変わったかのような一面を見せるようになる」

 ■治療で大切なことは。
「特効薬はないが、気付いたら早期に対応することが大切。薬で進行を抑えることは可能で、身近なかかりつけ医に相談してほしい。認知症と診断されたら、介護は家族だけで難しい。サポートのため施設などにも相談したい。本人だけでなく、家族の心のケアも必要に応じて行う」

 ■家族はどう接すればいいのか。
「家族の理解が何よりも大事だ。対応次第で、症状が良くも悪くもなる。認知症が始まったことを理解し、接し方を身につけてほしい。認知症の人は怒られたことを忘れないので、肯定的に受け入れて優しく接したい」

 ■認知症にならないよう、どんなことを心掛けたらいいのか。
「生活習慣を改善すること。特に高コレステロール、高血圧、糖尿病に注意したい。太らないよう食事は塩分や油の多い物やカロリーの高い物を控え、3食バランスよく食べる。運動も規則的にしてほしい」

 ■認知症治療における東北の今後は。
「認知症の人を家族だけでなく地域全体で支えたい。東北は人間的なつながりが地域に多く残り、環境もいい。東北を認知症対策のモデルにし、より生き生きとした地域をつくり上げたい」