インタビュー人口減対策 まずは雇用
県だけではなく東北から域外に流出する動きを、仙台都市圏を中心にいかに食い止めるかが宮城には求められている。そのためには安定的な雇用の確保が欠かせない。質の高い企業を誘致し、地元企業との取引拡大で景気が上向けば、企業は働き手を求める。
外部の血を注ぐことは地元企業の体力強化にもつながる。例えば自動車産業は品質、価格、納期などで発注元から厳しい注文が寄せられる。部品の供給元になれば、自動車以外の分野で活躍できる体力もつく。
農林水産業では、付加価値の高い売れる商品作りに力を入れる。今、どの地域の品種の米もおいしく、差別化が難しい。全く別の観点から価値を付ける工夫が必要だ。
県古川農業試験場(大崎市)が開発した「金のいぶき」という玄米食用品種がある。リラックス効果があるアミノ酸のGABAなど豊富な栄養分を含み、来年度作付け分も売り先が決まった。健康志向に乗ったヒット商品の一つ。他地域との差別化のヒントがある。
減少する人口の穴埋めとして交流人口の拡大も重視した。来年6月末に完全民営化される仙台空港を起点に、特に海外からの観光客を呼び込みたい。ただ、宮城の観光地だけでは京都や北海道に勝てない。仙台空港を軸に、東北の5県と連携した観光客誘致も必要になるだろう。
地域振興は歴代の内閣が取り組んできたテーマ。地方創生自体が真新しい政策とは思わない。景気が右肩上がりで、人口増加の局面でも成功しなかった歴史がある。人口減、税収減の状況下で「地方は知恵を出せ」と言われても難しい。
総合戦略には「国の役割への期待」として道州制導入を明記した。国が権限を道や州に移せば、地方は自然に創意工夫をするようになる。真の地方創生を実現するためには、抜本的に国の仕組みを変えるべきだ。
(河北新報)