人・産業逃げた先にある安心。もしもの備え
キットは炊かずに食べられるアルファ化米と塩、水がひとそろいで5年間保存可能。同封の袋と熱源を使って約15分待つと、熱々のご飯1食分が出来上がる。
前の作業所は津波で流失。昨年6月に完成した高台の本設施設で自閉症や精神障害などがある利用者が箱詰め作業に当たる。
商品は自身も被災した主任生活支援員吉田富美子さん(53)が発案。息子が施設に通う吉田さんは当時、支援物資の列に長時間並んだが、口にできたのは冷えたご飯だった。「つらさとむなしさで泣けてきた。心を温かくするものが必要」と開発の原点を語る。
支援者の負担軽減を狙い、物資をワンセットにしたのも震災の教訓だ。
北上アビリティーセンター(北上市)がデザインを担当し、日本デザイン振興会のグッドデザイン賞を受賞。既に3千食分を出荷するなど確かな評価を得つつある。吉田さんは「次に起こる災害でつらさを感じる人を減らしたい」と思いが全国に届くことを願う。
(岩手日報)