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インタビュー高村誠人さんへのインタビュー

高村 誠人
中小企業基盤整備機構東北本部の高村誠人氏
東日本大震災をはじめ、東北はさまざまな災害に見舞われてきた。深刻な冷害に度々遭い、少子高齢化や人口減少も歯止めがかからない。だが、厳しい経験から得た知見は新たな防災産業や地域活性化のヒントになる。東北七新聞社協議会の「とうほく創生Genkiプロジェクト」第3回のテーマは「人・産業を広げる」。困難を逆手に取り、ものづくり、地域づくりに挑戦する企業や人物を紹介する。

中小企業の経営を支援する中小企業基盤整備機構東北本部の高村誠人本部長に、東北地方の企業が抱える課題と解決策を聞いた。

—東北の企業の現状は。
「直近の中小企業景況調査(4〜6月)を見ると、全国的には緩やかな回復基調にあるが、東北は青森、宮城、秋田、福島の4県が全国平均を下回る。就業人口が減少し、2030年度には青森、岩手、秋田、山形の4県で、総生産が14年度比で20%以上縮小するという試算もある。もはや放っておける状況にない」

——解決への道筋を教えてほしい。
「情報通信技術(ICT)による省力化と域外への販路拡大で生産性を上げることだ。商品・部門別に経営状況を分析する『管理会計』の導入も鍵になる。利益を上げて設備投資や給与に還元できれば、人口減少の局面でも良い人材を集められ、事業継承にも有利だ。東北本部は行政や商工会議所などと連携し、そのノウハウを伝授している」
「東北の製造業は情報通信機器や電子部品・デバイスの比率が高く、自動車産業進出の集積効果も出ている。自動運転や電気自動車といった技術の開発が進むにつれて電子部品と自動車を中心に産業が融合され、起爆剤になると期待している」

—「東北発」の取り組みが乏しいと指摘されることも少なくない。
「情報発信、海外進出が苦手な東北の企業は多いが、もっと自信を持つべきだ。東日本大震災を機に移住した人やUターン者が地域を引っ張っている。彼らと連動することが重要。20年の東京五輪に向け世界中から注目される好機を、東北6県で協働して利用することも大切だ」

—防災産業をどう見る。
「発泡スチロール製造のケー・エス・ケー(仙台市)は震災後、早期復旧に役立つ建材と土木資材の扱いを増やした。鮮冷(宮城県女川町)は災害時にも火を使わず食べられる水産加工品を作っている。だが防災展などに出展する企業はまだ少ない。静岡県のように防災関連の企業がまとまって情報発信してはどうか。被災体験のある東北は成長の可能性を秘めている」

—東北の企業が元気になるには。
「グループ化が一つのやり方だ。地域の企業が共同で販路を開拓したり、設備を共有したりする事例が震災後に出ている。魅力的な企業が増えれば、若者の流出を止められる」

高村誠人

プロフィール

高村 誠人

たかむら・まこと 豊橋技術科学大大学院建設工学科修士課程修了。82年地域振興整備公団(現・中小企業基盤整備機構)入り。中小企業基盤整備機構震災緊急復興事業推進部審議役、新事業支援部審議役、経営支援部審議役などを歴任。15年7月から現職。62歳。福井市出身。