インタビュー地元に寄り添い復興加速 /ウィズコロナ時代、東北有利
—産業の現況をどう見る。
「東北の製造業のリーディング産業は、上位から電子部品、食料品、輸送機械、生産用機械の順。2010年以降、自動車関連産業などの立地により、輸送機械と、ものづくりを支える生産用機械は増加傾向にある。最近の動向は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生産調整の影響を受け、輸送機械が4月に急速に低下した。6、7月は持ち直しの傾向が続き、これからは順調に戻っていくと見込んでいる。商業も百貨店を中心に厳しい状況だが、少しずつ回復している」
—新型コロナは経済活動に大打撃を与えた。今後の見通しは。
「生産調整や営業自粛で大変苦しい状況に追いやられた事業者のため、国は持続化給付金や家賃支援給付金を創設した。病気に例えれば輸血をして生命活動が止まらないようにした。今後は退院に向けてリハビリに入っていくべきだ。『Go To キャンペーン』などを活用して、感染抑制と経済の立て直しをバランスよく取り組んでいくのがこれからの方向性だろう。コロナのピンチをチャンスに変えて新事業に挑戦するベンチャー企業もいる。このような取り組みも応援したい」
—来年3月に東日本大震災から10年を迎える。被災地の復興の状況は。
「東北全体を平均的に見ると震災前の状況にほぼ戻りつつあるという認識だが、東京電力福島第1原発の周辺地域など、回復とは言えないエリアもある。引き続き地元に寄り添って復興を加速しなければならない。第1期の復興・創生期間が本年度で終わり、来年度から第2期に入る。国の基本方針のギアが変わるので、さらなる成長にシフトしていく必要がある。(福島県沿岸部で新たな産業基盤の構築を進める)福島イノベーション・コースト構想を復興のシンボルとして応援してきたい」
—東北が抱える大きな課題に人口減少がある。
「5G(第5世代移動通信システム)やIoT(モノのインターネット)など情報技術の進展により、疑似的に職場環境をつくり上げることで、地方でも働ける時代になった。ウィズコロナ時代では、一極集中から地方分散への流れが加速するだろう。東北には長年培ってきた産業に加え雇用と物流があり、自然が豊かで食べ物もおいしい。働きながら人生を豊かにできる東北は、働き方改革という点でも有利な地域だと考えている」
プロフィール
渡邉 政嘉
わたなべ・まさよし 東京工業大大学院修士課程修了、東北大大学院博士課程修了。1990年通商産業省(現経済産業省)。在オランダ日本大使館、東北経産局総務課長、産業技術環境局産業技術政策課長、新エネルギー・産業技術総合開発機構理事、中小企業庁経営支援部長などを経て2020年7月から現職。57歳。東京都出身