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インタビューロングステイの仕掛け急務

新型コロナウイルスの影響から抜け出せない観光業界。コロナ禍の現状、コロナ後の展望について、東北観光推進機構の紺野純一専務理事(71)に聞いた。

—東北デスティネーションキャンペーン(DC)が展開中だ。
「東日本大震災から10年を迎え、復興支援への感謝、東北の魅力を国内外に伝える狙いだが、厳しい現状にある。しかし、コロナ禍だからこそデジタルの取り組みはしっかり進めてきた。各種業界との連携も構築できた。サイトでは4400以上の観光コンテンツを紹介している。花、自然・風景など6テーマに分けたコーナーは、桜ひとつ取っても広大な東北なら1カ月半楽しめる。パンフレットに載せた全てのイベントやスポットを、QRコードで詳しく解説するページにつながるようにしている。新たなデジタルベースの蓄積はレガシーとして、コロナ収束後に生きてくると確信している」

—コロナ禍が観光に突きつけた課題は。
「インバウンドが2019年まで右肩上がりで伸び、後れを取っていた東北も168万人泊と1年前倒しで150万人泊の目標を達成したが、観光・旅行業は社会経済環境に大きく影響される。コロナ禍で気付かされたのは、マイクロツーリズムに見られるように、観光の原点に立ち返り地域の良さを見直す姿勢、それと時代の先端を行くデジタルを取り込んで、広域で情報発信する仕組みをいかにつくるかという点だ」

—DX時代の新たな観光スタイルとは。
「これまでは観光に携わる者が情報を提供したり、旅行業者が商品を開発したりと供給する側の論理優先だったが、消費者がスマホで予約したり、会員制交流サイト(SNS)で情報発信したりする時代。消費者の移動データ、サイトアクセス数などを検証し、新しい旅のスタイルに向けた戦略づくりが大切だ。バーチャルリアリティー(VR)などで疑似体験はいくらでもできるが、観光は人と人の交流、現地を訪れることが基本。本物を磨き上げ、アナログとデジタルをどう組み合わせるのかが問われる」

—コロナ後、東北の明るい未来を見据えた提言を。
「少子高齢化が到来し、国内マーケットには限界がある。しかし、海外の移動人口はまだまだ増える。各県が連携して海外マーケットにアプローチすることで明るい展望が開ける。東北への旅行者1人当たりの宿泊数は1・56(2019年)で2泊もしていない。ロングステイ(長期宿泊)の仕掛けづくりが急務で、当機構はプロジェクトを始動した。ハワイ・ワイキキを連想してほしい。ナイトクルーズを筆頭に体験もの、オプショナルツアーが無数にあり、4泊程度の楽しみ方がそろう。これを東北域内でできないか。東北には新幹線のネットワークがあり、高速道路も充実し、エリア内移動が容易になった。デジタルを活用し、3年かけてぜひ形にしたい」

紺野純一

プロフィール

紺野純一

(こんの・じゅんいち)1968年国鉄入社。87年JR東日本入り。福島駅長、仙台駅長、仙台ターミナルビル専務取締役ホテル事業本部長兼ホテルメトロポリタン仙台総支配人などを歴任。2015年東北観光推進機構専務理事。東北DC推進協議会事務局長も務める。71歳。福島市出身。