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インタビュー事業革新にデジタル技術

平井淳生東北経産局長

世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス。国内では全都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、経済回復の兆しが出てきた。コロナ禍からの産業再生にはDX(デジタルトランスフォーメーション)が鍵を握り、東北の強みをいかに結び付けるかが問われている。東北経済産業局の平井淳生局長(54)に東北の産業の現状や展望、提言を聞いた。

—東北の魅力は。
「食や自然、歴史に恵まれている。この豊かな資源を産業振興にどう活用するかは東北経産局の任務であり、産業界にも期待している。人口減少が進む中、物やサービスの付加価値をどう高めるかが活性化の鍵を握る。一人一人がより付加価値の高い仕事をし、新しい価値を生む必要がある。それは東北の課題でありチャンスでもある」

—東北の産業、人の現状をどうみるか。
「東日本大震災後の10年間は東北の産業界の努力に加え、国が政策資源を投入したこともあり、着実に復興を遂げてきた。だが、コロナ禍でこの2年はまた大きく落ち込み、足元は一進一退の状況だ。特に観光や飲食は次の展開を描くのが難しい状況にあった。人に関しても大震災後の就業者減少から回復・増加傾向にあるが、十分ではない。事業者は次の展開を模索しても人が集まらないという。全国で少子高齢化が進むが、東北は特に若者の流出が顕著な地域だ」

—コロナ禍が東北人に突き付けた課題は。
「事業者の事業再構築や事業継続は国も手厚く支援しているが、計画策定など一定のハードルがあるのは事実。支援策を有効かつ迅速に使えるよう見直す必要がある。一方で、どのビジネスを継続し、どんなビジネスに進出するのかを考えるのは事業者自身。そこで知恵を出し、汗もかき、リスクを飲み込んで覚悟を決め、取り組む必要がある」

—DX時代の新たな産業のスタイルとは。
「DXはデジタルとトランスフォーメーション(事業革新)の2単語でできており、重要なのは事業革新だ。事業革新にデジタル技術は有効なツール。今はピンチだが、デジタル化を『我がこと』として捉える好機でもある。事業者はビジネスの在り方を考え、事業革新につなげてほしい」

—東北の明るい未来を見据えた提言を。
「デジタル技術は距離や場所、時間の問題を一気に解決するため、東北を不利に感じる必要はない。東北の強みを生かし、新たな価値を生み出すツールとして捉えてほしい。東北経産局は三つのキーワードを掲げており、一つ目が『価値共創』。大震災で絆という価値観が見直され、逆境のときこそ絆の中で課題を解決してきた。この貴重な価値観を大事にしたい。二つ目が『イノベーション』。新たなことを始めるには新技術、新ビジネスモデルを生み出す必要がある。大学や研究拠点の活用が欠かせない。最後は『スタートアップ』。地域や大学の後押しを受け、東北発の企業、新ビジネスを生み出したい」

平井淳生

プロフィール

平井淳生

略歴 ひらい・あつお氏は京都大大学院工学研究科電子工学専攻修了。1992年通商産業省(現経済産業省)に入り、情報関連やIT関係部署に長く所属。直前は内閣官房情報通信技術総合戦略室参事官で、デジタル庁立ち上げに向けて自動運転やテレワークの部門を担当。2021年7月から現職。官民交流でテレビ番組制作プロダクションに出向した異色の経歴を持つ。54歳。大阪府出身。