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「飲む点滴」甘酒普及に力
よこて発酵文化研究所(秋田県横手市)

みそ、しょうゆ、漬物、納豆、日本酒—。日々の食卓に欠かせないこれらの調味料や食品には、発酵が深く関わっている。秋田県横手市は昔から米麹(こうじ)を使った食品作りが盛んな地域。民間有志や行政でつくる「よこて発酵文化研究所」(多賀糸敏雄所長)が2004年から、発酵をキーワードにしたまちづくりに取り組んでいる。

研究所には、市内の農家や醸造会社など約100個人・団体が加盟する。会員の「羽場こうじ店」(横手市増田町)は1918(大正7)年創業の老舗。昔ながらの製法で麹やみそを作り続けている。佐々木隆安専務(35)は「発酵食文化は、雪深い地域で食品を保存するために根付いた。それが今、健康の面から注目されている」と話す。

市民の健康づくりは研究所の活動目標の一つ。目標の実現に向け、米と米麹だけを原料にしたノンアルコール飲料の甘酒の普及に力を入れている。

研究所の顧問を務める小泉武夫・東農大名誉教授によると、甘酒はブドウ糖、必須アミノ酸、ビタミン類などを豊富に含んでいる。これらは、医療機関で使われる点滴の成分と同じ。江戸時代には夏バテを防ぐ滋養強壮剤として、庶民に愛飲されていたという。

多賀糸所長(70)は「高齢化社会では予防医学の視点がとても重要」と強調する。発酵食品が秘めるパワーを市民の健康増進につなげるため、さらにアピールしていく考えだ。

【秋田魁新報】