食生産者の苦労、実を結ぶ
生産日本一「カシス」加工品続々(青森市)
青森市が日本一の生産量を誇る紫黒色の小さな果実「カシス」。ビタミンCやカルシウムを豊富に含む健康食品として注目を集め、スイーツやジュースなどの加工品が続々誕生している。「さらにPRして全国、世界へ展開したい」─。産地化の苦労が実を結んだ地元関係者は、今後の飛躍に期待を込める。
カシスは「黒房すぐり」というベリーの仲間。オレンジの約2倍含まれるビタミンCのほか、ビタミンAやβカロテン、カルシウムやマグネシウムなどが豊富とされる。
カシス関連商品を15年以上前から手掛けるようになった同市の「はとや製菓」は現在、ジャムなどの加工品計7種類を販売している。安定した人気がカシス製品の強みといい、同社の安保照子社長は「効能をもっと前面に出してPRしなければ」と、新商品開発に知恵を絞る。
同市の地場産品を扱う複合施設「A−FACTORY」では今年7月、カシスを使ったスパークリングワインを約1200本の数量限定で発売したところ、約1カ月でほぼ完売したという。販売担当者は「青森カシスの知名度はまだ低いが、好評だったので来季も商品化したい」と話す。
同市でカシス作りが始まったのは、1975年ごろにさかのぼる。土壌学が専門で弘前大農学部教授だった故・望月武雄氏が、青森の気候に合う新たな作物として、カシスの苗木をドイツから取り寄せたのがきっかけ。指導を受けた農協婦人部を中心に約30人がジャムやジュースなどの加工品作りを始めた。
手探りの中で始まったカシス栽培は、実の色づきにむらができたり、収穫時期の見極めなどで苦労した。それでも、試行錯誤を繰り返すうちに剪定(せんてい)や植え付けのノウハウを確立。初め数十人だった生産者は約140人に増えた。作付面積も約180アールから昨年度は702アールに拡大し、収穫量も約10トンを確保できるようになった。
地元住民にもなじみの薄いカシスの知名度をもっと高めようと、生産者らでつくる「あおもりカシスの会」は、2009年から「世界カシス早摘み選手権」と銘打ったイベントを続けてきた。一定の時間内に摘み取るスピードを競うもので、今年は50人の定員が県外を含む参加希望者ですぐ埋まる好評ぶりだった。
同会の林健司副会長は「青森の名物はリンゴだけじゃない。街おこしの意味でもカシスの認知度を高め、いつかは世界に打って出たい」と話した。
【東奥日報】